あの夢から覚めたら目の前にロータスがいた。
「おはようございます、灯生様。」
「お、おはよう、ロータス。相変わらず近いな。また吸ったのか?」
「あ、いえ、まだです。」
「そ、そうなのか・・・。その、お腹は減っているのか?」
「その、はい。吸いております・・・。」
なんだその照れている感じは!?こっちもなんか照れるじゃないか!?
「それじゃ、吸ってもいいぞ。」
俺は首元をロータスに見せた。
「それじぁ、失礼して。」
チクリと首元の皮膚がロータスの歯に刺さり、血を吸われている。
注射のようなものかと思ったが全然違う。これはなんというか・・・首元にキスマを付ける感じだ。
あぁ、朝から元気になってしまう。血を吸われている感覚が少し心地よい。
食事が終わったのか、ロータスは血の付いた首元を最後にペロッとしてから離れた。
「もう、いいのか?」
「はい、その、ごちそうさまでした。美味しゅうございました。」
なんで照れているんだ!?ロータスの顔がまともに見れない!?
「その、準備するから外に出ていてくれ。」
「かしこまりました。」
「食事のお礼にお静めいたしましょうか。」
な、何を言っているんだロータスは!?
「何のこと、かな??」
「元気になられているようなので・・・嫌でしたら外で待っております。」
嫌なわけないじゃないか、というよりもそんな申し出断られるわけないだろ・・・。あぁ不甲斐ない。
「それじゃぁ・・・よろしく頼む。」
「かしこまりました。」
朝から燃えてしまった・・・美人のメイドさんを目の前にして・・・。
ー広場にて。
朝食を済ませた俺たちは、校長の話でもあった広場の奥に構えているペトルジューカ・サーカスを見に行くことにした。
それは思っていたものと違って、サーカスと言えばテントかと思っていたが、見た目からして風船のようなそんな形の建物?だった。中に入ると円形上の舞台、それ取り囲むように観客席がある。着いた頃には観客は満員だったため、俺たちは少し遠めの席に座った。そろそろ始まりそうな雰囲気だ。舞台が暗転した。
物語は、老魔術師が3つの人形に命を吹き込む場面から始まる。神獣 生炎鳥シャスティフォルの噂を聞いた3つの人形たちが老魔術師を連れていろんな町や森や山を冒険するという内容だ。魔法や魔術の効果も加わっているのだろう。時には森の中のような雰囲気になったり、熊のような猛獣に追いかけられたり、常夏の平原シーンでは熱くなったり、3つの人形が市場で盗みをしたせいで兵士に追いかけられるシーンに風のような演出が入ったりとなかなかこだわっている。最後にはシャスティフォルを見つけるが、そこで老魔術師が息絶える。3つの人形たちに見守られながら、シャスティフォルの炎によって弔われるが、それと共に3つの人形たちも動かなくなるという少し悲しい最後だが感動的だった。
サーカスっぽいがどちらかというと演劇を見ている感じだな。これはこれで面白い。
終わったころには拍手喝采で泣いている人もいた。この世界には数少ない娯楽なんだろう。気づけば隣でみんな泣いているのに気づいたがそっとしておこう。
ひと段落したころサーカスから出て市場に向かい、昨日のように出店で買い食いをしたり買い物をしたりとみんなで楽しんだ。この2日間、いい休みになってよかった。こんな日常が続けばいいんだけど。
ー夕食にて。
「サーカス楽しかったにゃ~!あんなの初めて見たにゃ~!」
「私もです!とっても感動的でしたね!」
「人形かわいかった!!」
「みんな満足しててよかったー。俺もあぁいうのは初めて見たよ。ここら辺では珍しいのかな。」
「はい、それは珍しいことでございます。あのペトルジューカ・サーカスもこの日のために練習していると聞いていますから。」
「そうなんですね。あれは実話なんですか?」
「諸説あるみたいですが作り話かと、人形に命を吹き込む魔法なんて聞いたこともありませんから。」
「そうですよね!そんなことありえませんよね!」
ほんとにそうなのかと少し疑問には思っている。真実味がある場面が何ヵ所あった。実話であればどんな魔法なのだろうか、その命を吹き込む魔法とやらは。
「あぁそういえば灯生様。明日、父が会いたいそうで、校長室に来てくれと。すみません、人使いが荒いもので。」
「あぁいえいえ、こちらもお世話になっておりますので!わかりました!」
ー寝室にて。
夕食も食べ終え、そろそろ寝ようというところにロータスが訪ねてきた。そう、例のあれだな。
「はい、そうぞー。」
「すみません、それでは失礼して。」
あぁ、この吸われている感じ、癖になりそうだ。いやいや、貧血になってしまうではないか!?
「なぁ、今まで食事はどうしていたんだ?」
「えーっと、秘密です・・・。」
「そ、そうなのか・・・。」
秘密ってなんだ?そう言われるとものすごく気になる。他の人の血を吸っていたのには違いないだろうが。
その後、食事を済ませたロータスから朝の続きの申し出を受け入れた俺は、久々に肌がツルツルになるまで楽しんだのであった。