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27 新しい仲間と武器


ミンチェスター邸に帰宅した後みんなを集め、事の顛末を話した。


「それは大変にゃ~!!」


「僕も心配だよ。」


「ネルビアさん、各都市王都にいるミンチェスターの兄弟はどうします?」


「そのまま監視役でいさせますよ。」


「魔人が暴走するかもしれませんよ!人間に狙われるかも!」


「あれ、父から聞いていませんか??我々ミンチェスター家は代々、神獣様の加護を受けておりますので大丈夫なのです。」


「はい、神獣様の加護はその力の一端を少々借りております。簡単に言うと神獣様の眷属なものです。なので魔王には支配されません。」


「なんでそれを言ってくれないんですか校長はー。」


「すみません、少々抜けている人ですから。王都のギルドにいる兄弟のハルビアに連絡を取っておきます。王都に行った際はギルドに顔を出してください。王都は危険ですから十分注意してください。ハルビアは我ら兄弟の中でも優秀ですから。」


「ハルビアさん。わかりました、ありがとうございます。」


「あと、灯生様よければロータスをテイムして連れて行ってほしいんですが。」


「いいんですか!?」


「はい!彼女も行きたがっておりますし、灯生様ならお任せできます。魔王が召喚されてしまったらロータスもどうなるか分かりませんから。彼女自身も承知の上です。」


「ロータス、君はそれでいいのかい?」


「はい。それが望みでございます。」


「ほんとは?」


「毎日美味しい食事をしたい・・・です。」


ルーナとリアの視線が痛い・・・。がこれはしょうがないことなのだ。


「あー、うん。わかった、テイムするよ。」


「ひなりさん!!」「ご主人様~!!」


「しょうがないでしょ2人とも!ロータスが暴走でもしたら2人とも嫌でしょー?」


「それはそうですが・・・。」「それを言われると・・・。」


「それじゃロータス、テイムするよ。」


俺は指をナイフで切り、血を一滴、ロータスに飲ませ、「テイム」と唱えた。

すると首元が光り、花の刻印のようなものが現れた。


「よし!成功したみたいだ。」


「これで灯生様のものに・・・うふふふふ~。」


「ロータス!ご主人様はリアのものにゃ~!」


「いや!私のものです!!」


「2人ともいい加減にしなさい!私のものですよ!」


「セリーヌまで~。」


「僕も兄ちゃんと一緒だもん!」


あぁまた増えてしまったぁ。なんでこの世界に来てこんなにも女性が寄ってくるんだー。


「そうと決まれば準備だな。そういえばアーロ、あれはできたかな?」


「うん!できてるよ兄ちゃん!」


「おー!!それじゃ、ポナドじぃの鍛冶場に向かおう!」


ーポナドじぃの鍛冶場。


「おうお主か、注文のもんはできとるぞ!」


「ポナドじぃ、なんか久しぶりですね!」


「そうじゃな!アーロも随分鍛冶が上達したわい!それで2人で完成させた武器なんじゃが見てもらえるか?」


目の前に出されたのは紛れもない刀だ。この反り具合、長さもちょうどいい日本刀だ。本当に作ってしまうとは思わなかった。それにしてもきれいだ。

さて、これを俺が使いこなせるかなんだが。


「うん!これだよ、俺が作ってほしかったのは!流石お2人さんだね。」


「まだ、完成しとらんぞ?」


「へぇ?」


「兄ちゃん、魔剣にするんじゃないの?」


「魔剣にするには、剣に魔術を書き込む。それで完成じゃ。」


「魔術かぁ。」


そう俺には魔術を考えたことがないのである。そもそも魔術を記述化させる方法を知らない。これならソフィーに少し聞いておくべきだった。さてどうしたものか。

うーん、そうだな。詩、とかでもいいかな。感情が魔力にも作用するんだったら、それもありなのでは。

俺が知っている詩、心が動かされた詩。

そういえば小学校の頃、あの詩に少し助けられた気がする。幼心にその人書いた詩は心にひどく刺さった。

詩人 萩原はぎわら 朔太郎さくたろう。彼の詩はいつだって俺の心を救っていたような気がする。特に「月に吠える」という詩集。その中でも有名な詩はいろいろある。「竹」「春夜」「死なない蛸」などなど。あの忌まわしい記憶の中にそれだけは残っていた。その詩集の中でも少し前向きになれる詩があった。その詩の名を借りよう。


「書き込むにはどうしたらいいんだ?」


「水九木という木から取れる刻印用の樹脂で書き込むんじゃが生憎切れておってな・・・。」


「刻印かぁ・・・。」


そういえば『禁忌録』の中に刻印魔法というものもあったか。この際だ、試してみよう。


◈刻印魔法 我その言葉を印す その名は『天景てんけい


刀が光だし、『天景』の文字が刻まれた。成功、なのか。


「なんて読むのか分かんないけど刻まれたようだよ!」


「お主、どうやって刻んだんじゃ??」


「さぁ・・・少し試し切りをしても?」


「もちろんじゃ!」


まずは普通に素振りだ。刀身も長く反っていて少し重いのかと思っていたが、軽い。

それにしても素振りだけでこの静けさ。これがこの刀の特徴か。


それじゃ次は魔力を込めてみよう。安全に水魔法にしよう。まずは一振り。ふんっ!


「兄ちゃん!!」「お主!!」


「どうした??」


目を閉じていて分からなかったがミンチェスター邸の木々を数十メートル切断してしまった。

あぁやってしまったぁ。


「すまない、全然魔力は込めてないんだが・・・。こんに威力あるとは思わなかった。」


「こりゃまたすごいものをみたわい、あの静けさであの威力。どうじゃ、使ってみて?具合悪いとこがあったら調整するが。」


「大丈夫、ピッタリだよ。2人ともありがとう。」


「それでこのカタナ?の名前は?」


「そうだな・・・刻んだ文字に因んで、『天景』かな。」


「これはテンケイ?って読むんだね!どういう意味なのー?」


「これは夜明けで詩人が静かに乗っている馬車から世界を見渡しているという少し幻想的な詩なんだよ。」


「そうなんだ!天景、また詩を聞かせてよ!」


「思い出したらね、ところどころあまり覚えていなんだ。」


「うん!楽しみ!!」


今まで使っていた初期武器も少し愛着があったのでこれはアイテムボックスに閉まっておこう。

新しい武器『天景』。魔剣なのか妖刀なのか定かではないが、まぁそれはどちらでもいいだろう。

よろしくな!『天景』!!


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