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11 獣人と勇者


ー王都郊外。


「お待たせしました。無事に終わりました。どうですか?」


「はい、言われた通り種も蒔き終えました。」


「それじゃ家に帰りましょうか。」


「あの、城で何をしてきたのかお聞きしても?」


「少し悪戯をしただけですよ!大丈夫です!さっ、帰りましょ!」


「はい・・・。」



ーハルビア宅。


「ただいま~。」


「あ、お帰りなさーい!」


「保護した人たちは大丈夫?」


「少し混乱している人もいますが大丈夫です。」


「そうか。一応、エリアハイヒール!」


見たところ家族連れの獣人もいるようだ。30人ほどか。


「ルーナ、勇者は?」


「あそこに、アーロのところにいます。」


「わかった、ありがとう。美味しい料理をごちそうしてやって!」


「わかりました!!」


俺はアーロと勇者のところへ。


「アーロ、どんな感じだい?」


「兄ちゃん!少し混乱しているみたい。この世界の人ではなさそうだよ。」


「君、名前はなんて言うんだい?」


酷く怯えている。そりゃいきなり違うところに瞬間移動したんだから普通はそうなる。


「俺は灯生って言うんだ。こっちはアーロ、ドワーフだよ。」


「ぼ、僕は、アポロン。」


アポロン・・・どこかで聞いた名前だな・・・。


「アポロンか、いい名前だね。どこから来たのか覚えているかい?」


「分からない・・・でもここに来るまで、父さんと母さんと麦の収穫をしていたんだ。でも突然、目の前が光って・・・それで・・・。」


「うん、大丈夫。ゆっくりでいいよ。」


「気づいたら、お城の中にいて、首輪を付けられて、牢に閉じ込められてたんだ。たまに6人組のお兄ちゃんたちが戦いを教えるってやってきてた。」


「うん、わかった。教えてくれてありがとう。怖かったね。あったかいご飯食べてゆっくり休んでね。アーロ、しばらく頼むよ。」


「うん、わかった、兄ちゃん。」


ある程度経緯はわかった。年齢は大体10歳くらいか。どの世界から来たのかは分からないが、奴隷の首輪を付けさせ、無理やり戦争の道具として教育させるつもりだったのだろう。クソ汚いやり方だ。あの6人の肩書持ちも奴隷のことを知っていたのだろう。この王国はというよりも、一部の人間がかなり人間至上主義だな。

まぁそれはどの世界でも同じことか。人間という種族はどうしてこうも汚いものなのか。つくづく痛感する。


さて、リアの元へ行こうか。


「リア?大丈夫かい?」


「ご主人様~!」


「よしよし。俺がついてるから大丈夫。」


少しの間。リアを抱きしめていた。以前のことを思い出したのだろう。思い出は消えないものだ。


「リア、獣人族のみんなをケルバに返した方がいいと思うけどどう?」


「うん、リアもそれを考えてた。返してあげて、みんなを!」


「ケルバってどこにあるか分かるかい?」


「んー、わかんない。」


「うん、わかった。他の獣人の皆さんを見ていてあげて。」


「うん!」


「ハルビアさん、この獣人の皆さんをケルバに返してあげたいんですが、どうでしょう?」


「僕もその方がいいと思います。ケルバはここから北西の方向に行ったところにあります。王国の領土とケルバとの間に都市があります。バザール都市のベジハイドという都市です。そこにも我々の祖母がいます。」


「おばあさまですか!?はぁ、す、すごいですね・・・。」


「明日の朝一で向かった方がよいかと、何かとざわつくと思いますので。」


「そ、そうですね。荷車の改良をしないとなぁ。50人くらい入るように作り直そう。」


「兄ちゃん、手伝おうか?」


「あぁ頼むよ!アーロがいて助かる!」


「へへ!勇者、アポロン君はどうするの?」


「一緒に連れていくよ。王都から一刻も早く離れた方がいい。いつ狙われるか分からないからな。」


「わかった!それじゃ早く取り掛かろう!」


獣人たちとアポロンはルーナたちに任せて、俺とアーロは王都郊外にテレポートし荷車を改良した。

ほぼ家のような風貌になってしまった。あとはカメ吉次第なのだが・・・。


「カメ吉、これ、引けるか??」


「ちょっと待ってくだせぇ。」


と言うと、カメ吉は最初は重そうだったが、慣れてくるとだんだん進んでいった。


「大丈夫でせぇ!親分!」


「カメ吉、すごーく言いづらいんだけど、俺たちの他に30人ほど乗るんだが・・・。」


「え。ま、ま、ま、まぁ大丈夫でぜぇ!!」


絶対大丈夫じゃないな。軽くする魔法とかあればいいんだけどなぁ。

あ、そういえば一つ試していなかったスキルがあったな。


◈スキル『体魔操慣』


「カメ吉、これでさっきのように走ってみてくれる?」


「はいでさぁ。」


さっきよりすいすい走っている。あのスキルが役立ったようだ。

軽量化したというより、カメ吉自身の力が増した感じだな。


「親分!これだったら余裕で行けそうですぜぇ!」


「よかった!でも足が痛くなるだろ、装備を作っておくよ。な、アーロ!」


「うん!兄ちゃん!それは僕も思ってた!」


「そうですかい?ありがとうございやす~。」


アーロと一緒に『アトリエ』の鍛冶場でカメ吉の足装備を完成させた。カメ吉に渡すととても喜んでくれ、前よりも走りやすくなったと言う。その頃にはもう朝になっていた。


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