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20 ベジハイドからケルバへ


戦いを終えた頃にはもう夕方になっていた。

夕食を食べ終わったころ、俺は旅の再会をみんなに伝え、明日出発することを話した。ルルビアさんも了承してくれた。


「少年、これを持っていくとよい。旅の足しになるだろう。」


と、ルルビアさん特製の料理をくれた。


「お心遣い感謝します。これ、俺の魔力とスキルを付与している指輪です。念話も出来るので何かあれば知らせてください。」


「うむ。達者でな。ま、そこのイーゴリのじじぃもおるから大丈夫じゃろうて。」


「誰がじじぃだ!このくそばばぁ!」


「なんじゃと!?」


「2人ともそこまでです!!」


「ばぁば、喧嘩ダメ!」


「おぉ、アポロンよ。そうじゃな。元気にするんじゃぞ。」


「うん!ばぁばも元気でね!」


アポロンはいつからルルビアさんのことをばぁばと呼んでいたのやら。

獣人のみんなもアポロンも束の間の休息で安堵できただろう。不安と言えば。

ケルバの様子だ。魔人族が防いだとは言っても被害は出ているだろうから。


夜はアポロンと寝る予定だったが、じろじろ見ている女性陣があまりにもかわいそうだったので、最初からみんなで寝た。それはもうベッドが窮屈だったが、これはこれでいいものだとも思った。


翌朝。俺たちはルルビアさんに見送られながら出発した。澄んだ空気の中、背中を押してくれるような心地よい風が吹いている。


「じゃ、行くか。」


アポロンがルルビアさんに手を振り、俺たちはベジハイドを旅立った。

カメ吉の走りで途中までは爽快に進んだが、途中から林から森へと変化し、徒歩での旅になった。草木の匂い、鳥のさえずり、時折木々の影に動く獣の気配がした。ケルバまで3日ほどか。


1日目の終わりには、森の外れに小さな泉を発見した。流石にこの数の人は『アトリエ』には入りきれないので、野営をすることにした。焚き火を囲んで、ルルビアさんからもらった温かい料理を食べた。


「ケルバ、大丈夫だといいけどな」


獣人の中では不安の声が漏れていた。


「魔人族が防衛してくれたから、壊滅は免れているだろう。でも・・・。」


「ケルバが無事であることを、ただ祈るしかない。」


夜は俺の結界魔法でモンスターを防いだ。


2日目。森の奥へと進むと、雰囲気が少しずつ変わっていった。

漂う空気が重い。動物の声が少なくなり、異様な静けさが辺りを包んでいる。


「何かがいる。」


次の瞬間、森の奥から低いうなり声とともに、モンスターが姿を現した。ヘルファウンドだ。だが、すぐに立ち去った。立ち去る前、魔王さんの方を見ていた。ビビッて逃げたのだろう。助かるぅ。


2日目の夜も、俺の結界魔法でモンスターを防いだ。

そして3日目の昼前。森を越えると、遠くに獣人国 ケルバの旗がはためくのが見えた。


「あれが、ケルバか。」


ケルバの城壁か、崩れているように見える。外には黒い煙の跡が残っており、ところどころに瓦礫のようなものが見えた。復興が間に合っていないのか、どれくらいの被害なのだろうか。


「急ごう!」


俺たちは目の前のケルバに向けて走り出した。


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