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第21話 分断




分厚い黒い雲に空を覆われた深淵の国。目の前に広がる広大な大地も黒い土や岩しかなく、まさに漆黒の世界だ。

魔神が、どこにいるのか分からないので、何の考えも無しに歩き回るのは体力を消耗するだけで危険だ。

僕は、どうしたものかと考え込んでいた。


「みんな!見て!」

リリアが叫んだ。

僕らは、リリアの所に集まった。

リリアの手の平に乗っている漆黒の鍵が光っている。

そして、鍵の先からひとすじの光が真っすぐに伸びている。

その光は、遥か先の黒い山を指していた。

「これ。魔神の居場所を示しているんじゃないかしら?」

「恐らく、そうじゃろうな。光の指す場所に魔人はおる。」

ハックが補足してくれた。

「そうと決まれば、光の指す方へ行こうぜ!」

ゴラムが馬車に乗って手綱を握った。

僕らは、深淵の鍵の光が指し示す方向に馬車を走らせた。


しばらく進むと、険しい山道に差し掛かった。

左側は崖になっていて、崖の下には川が流れている。かなりの急流だ。

こんな狭いところで魔物に襲われたら大変だ。

僕らは慎重に進んだ。


すると、空から何かが襲ってきた。

アークデーモンだ!

僕らは臨戦態勢に入った。

「炎よ出でよ!ファイア!」

「防御せよ!バリア!」

「こいつら、飛び回るから攻撃が当たらないぞ!」

「思考を読むまで頑張ってくれ!うわっ!」

馬車が傾いて落ちそうになる。

「ケンタ!大丈夫、捕まえた!」

「ありがとう、キャス。」


ガタンガタン!


馬車の左側の車輪が道を外れた。

このままでは落ちる!

「みんな!落ちるぞ!馬車に捕まれ!」


うわーっ!


バッシャーンッ!!


馬車が川に落ちた。川は深くて流れが急だ。

僕らは必死に馬車にしがみ付く。

すると、川の流れの先が途切れているようにみえた.


!?


「滝だー!みんな、捕まれーっ!!」

僕が叫んだ時には、すでに滝に落ちる寸前だった。

僕らは、そのまま、滝を真っ逆さまに落ちていった。








う、うーん。

ここは、どこかしら?

すぐそこに川が流れている。

そうだ、私たちは滝に落ちて、、、そのあとは、どうなったんだろう?

他のみんなを探さなきゃ。

私は、周りを見回した。

青いフードが見える。ハックだ!

私は、ハックの所に駆け寄った。息はある。

「ハック!ハック!起きて!」

ハックの体を揺さぶると、目を覚まして起き上がった。

「う、ん、ここはどこじゃ?リリア、無事じゃったか。」

「ハック、良かった。ほかのみんなを探してくるね。」

わたしは、あたりを探した。すると少し先に、女の人が倒れていた。キャスだ。

「キャス!大丈夫?起きて!」

「んー?ここは?」

「キャス!良かった。」

「リリア。私たち、助かったのか?」

「うん、私とハックとキャス、他の3人もきっとどこかにいると思う。」

「よし、じゃあ、他の3人を探しに行こう。」


ふと周りを見ると、光の線が伸びているのが見えた。あれは、深淵の鍵!

私は、光の所を探して、深淵の鍵を見つけた。


「これがあれば、目的地には辿り着けるわ。」

「ほかの3人もこの光を見てそっちに向かうはずじゃ。」

「じゃあ、私たちは、とりあえず先に進みましょう。」


こうして、私(リリア)、ハック、キャスの3人は、魔神の拠点に向かって出発した。








一方、そのころ。


ケンタ、ゴラム、ミカの3人も川岸に流れ着き、合流していた。


「大変な目に合ったな。ほかの3人はどこだろう?」

「きっと、リリアたちは目的地に向かっているはずだよ。」

「なんで、そんなことがわかるんだ?」

「ほら、あれを見なよ。」

僕が指をさした方向に、光の線が伸びていた。真っ直ぐに、その先の山に向かっている。


「あれを目印に僕らも移動すれば良い。それできっと合流できる。」

「なるほど、流石ケンタだ。よし、そうと決まれば、俺たちも出発しようぜ。」

「わらわは、歩くのは嫌じゃが、仕方ない。」


こうして、僕(ケンタ)、ゴラム、ミカの3人は歩き出した。


ゴツゴツした岩山を超え、しばらく行くと、湿地帯のような場所に出た。

霧がかかっていて遠くが見通せない。足元はぬかるんでいて、足首が埋まってしまうほどの深さがある。

僕らは、慎重に少しずつ進んでいった。

鳥のような生き物が、上のほうを飛んでいる気配がする。

「ゴラム、足を取られないように気をつけろよ。」

「ケンタ、分かった。それにしても陰気なところだな。」

「わらわは、もう嫌じゃ、城に帰りたい。」

湿地帯は終わりが見えない。もう、かなり歩いてきているはずだ。

すると、急に足を取られた。


うわっ!?


僕は、ひっくり返った。それほど深くなかったはずの湿地に体が沈んでいく。もがいてももがいても、水面が見えない。このままでは死ぬ!

僕は意識を失った。


気が付くと、僕は魔神教の神殿にいた。目の前にフードを被った教祖がいる。

「人間よ。私は魔物なのだ。人間と共存など出来ぬ!」

「お前の気持ちも分かる。でも、人間を殺して何になる?戻るなら今がチャンスだ。」

「人に戻る気はない!お前もこちらに来たらどうだ?魔族の体は素晴らしいぞ?」

「僕は魔物になる気はない。ユイさんのためにも、こんなことはやめて、人に戻るんだ。」

「お前は何を言っている?私を誰だと思っているのだ?」

「ユイさんはお前の恋人だろう?違うのか?」

「お前は、誰かと勘違いをしているようだな。私は、お前の恋人だ。」

そういうと、教祖はフードを外した。

フードの下から現れたのは、真っ赤な血のような眼をした、リリアだった。

「うわーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

僕は絶叫し、気を失った。


「ケンタ!ケンタ!起きろ!」

「う、うーん。。。ここは?」

「深淵の国の湿地帯だよ。足を滑らせて溺れかけたんだ。」

「ゴラム、すまない。」

「大丈夫だ、湿地帯は抜けた。」

「わらわも一応、心配したぞ。」

「もう、大丈夫。先を急ごう。」


また嫌な幻を見てしまった。僕らは先を急いだ。





一方そのころ。


私(リリア)たちは、森の中を歩き続けて、古代遺跡にたどり着いた。

左右にずっと壁が続いていて、ここを通るしかないみたいだ。


「ここに入口があるわ。ここから中に入りましょう。」

「何があるかわからんから、気を付けるんじゃぞ。周りの物に不用意にさわっちゃいかん。」

「わかった。ハックのいうとおりにするよ。」


私たちは慎重に遺跡の中を進んでいく。すると、行き止まりになってしまった。

「行き止まりだわ。引き返しましょう。」

「何か壁に文字が書いてあるぞ。」

ハックが言うので、壁を見てみると、古代の文字で何か書いてある。

「この文字、、、私、読めるわ。」

私の里に伝わる文字と同じだ。私は壁の文字を読んだ。

「右手と左足を合わせよ。って書いてあるわ。」

よく見ると、壁には両手を上げた人の姿が描かれている。

「壁の右手と左足に、自分の右手と左足を合わせるのかの。」

ハックがいう。

「じゃあ、私がやってみようか。」

キャスが右手を上げて左足を壁についた。すると・・・


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ


壁が動いた。先に進めるようになったので、私たちは、そのまま先に進むことにした。

しばらく進むと、今度は広い場所に出た。部屋の中心に台がある。

私は、台の近くまで行ってみた。

台の上には古代文字が書いてある。

「魔の物を打ち破る者、その力を示せ、さすれば道は開かん。」


ガシャン。


鉄格子が開くような音がした。


グォー!


「アークデーモンじゃ!」

私は咄嗟に呪文を唱えた。

「防御せよ!バリア!」

アークデーモンが指先から闇の光を放つ。バリアで防いでいるけど、長くはもちそうにない。

「私の拳を喰らえ!」

キャスの鉄拳がアークデーモンのお腹に突き刺さる。

流石のアークデーモンも苦しそうだ。


「よし!キャス!あとは任せるのじゃ。炎よ、出でよ!インフェルノ!」

ハックの炎魔法がアークデーモンを直撃する。


ギャー!


アークデーモンが燃え上がった。そして、真っ黒な炭になってしまった。


魔物を倒すと同時に、扉が開いた。私たちは扉から外に出た。

そこは、遺跡の外だった。森がまだ先へと続いている。

深淵の鍵の光は、その森の先を指している。

私たちは、先を急いだ。ケンタたちも向かっていることを信じて。。。








ギャー!

遠くで断末魔の叫びがしたような気がした。

「どうした?ケンタ。」

「いや、何でもない。」

僕らは、深淵の鍵が放つ光の方向に向かって進んでいた。その起点にリリアたちがいるはずだ。

そして、光が動いているということは、向こうも目的地を目指しているということだ。

湿地帯で思わぬ足止めを食ったけど、その後は順調に来ている。敵もザコばかりでそれほど強くない。


光が近づいてきた。みんな無事でいてくれ!僕は祈るような思いでいた。

「ケンタよ。他の3人もきっと無事じゃ。魔王のわらわが言うのだから間違いない。」

「ありがとうミカ。僕も信じてるよ。みんなを。」

真っ黒な荒野の向こうに人影が見えた。そこから光が発せられている。

徐々に光が近づいてくる。僕らは走り出していた。


「リリア!」

無意識に叫んでいた。生きていてくれ!頼む!その一心だった。


「ケンタ!」

リリアの声だ!人影は3人。3人とも生きている!


「リリア!」

「ケンタ!」

3人の姿がやっと見えた。みんな無事だ。


「みんな!」

僕ら6人は、ついに合流した。

「無事で本当に良かった!」

6人で抱き合った。一人も欠けることなく再会できて本当に良かった。


「リリア、信じてたよ。」

「ケンタ、私は強いのよ。」

僕とリリアは抱き合い、キスをした。


「お二人さん、感動の再会のところ、申し訳ないんだが、魔神の拠点が見えてきたぜ。」

ゴラムの言葉で、僕らは慌てて離れた。恥ずかしくて顔が熱い。

ゴラムが指をさした方に、漆黒の城がそびえ立っていた。

あれが魔神の住む城だろう。


僕らは気を引き締めなおして、魔神の待つ城に向かって歩き出した。






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