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第14話 ボス部屋を地獄絵図にしてみた

『熟練度が一定に達しました。【魔力操作Lv9】が【魔力操作Lv10】になりました。【魔力操作Lv10】が【魔力精密操作Lv1】に進化します。』  


 ついに来たか……。  


 ──あれから、俺はひたすら鍛錬を重ねていた。  

 ボス部屋に備わった【成長促進】の効果により、スキルのレベルはみるみるうちに上がっていった。  


 その結果、俺のステータスはこうなった。  


 ――――――――――――――――――――



『ステータス』 

 種族: ゴブリンキングLv23  

 職業: 迷宮守護者ダンジョンボス  


 専用スキル: 小鬼王剣術Lv10

        眷属支配  


 汎用スキル: 魔力精密操作Lv1 

        魔力増強Lv6  

        炎初級魔法Lv10  

        雷初級魔法Lv6  

        土初級魔法Lv5  

        風初級魔法Lv1  

        水初級魔法Lv1 

        術式付与

        術式改新 

        万能翻訳バベル



 ――――――――――――――――――――


 俺自身、これほどのスピードで成長するとは思わなかった。  


 ──特に、【魔力精密操作】が手に入ったのは大きい。  


 これは、単なる魔力操作の強化版ではない。  


『魔法の発動時の魔力量を自在に調整し、魔法の効果を細かく制御できる』という、極めて高度なスキルだ。  


 つまり、同じ魔法を使っても魔力の流し方を変えることで、威力を大幅に上げることができる。また、初級魔法に必要な魔力はすぐに練ることができるので戦闘中の魔法の発動がよりスムーズになった。


 次に、前回のダンジョンボスの仕事を完了した報酬で獲得したスキルだが【術式改新】だ。これは今までは決められていた術式を自由に書き換える事ができるスキルだ。その結果、範囲や距離、進行方向などを自由に変え、慣れれば全く新しい魔法を作り出すこともできるだろう。  


 例えば── 

【炎初級魔法・火球】を、点で爆発する弾丸のように撃つこともできるし、細いレーザー状にして高温で焼き切ることも可能。  

【雷初級魔法・電撃】なら、電流の拡散範囲を自在に操作し、単体攻撃から範囲攻撃に変えることができる。  


 ──これはもはや、"魔法の自由化"と言ってもいいスキルだ。


 ただこれだけで満足したわけではない。 俺は考えていたのだ──さらなる悪巧みを。





【術式改新】、【土初級魔法】、そしてボス部屋の特典【守護部屋の主】──  

 この三つを組み合わせれば、今までただ無駄に広かった俺のボス部屋を最強の要塞とすることができる。




 きっかけはある時―――今まではせいぜい5人程度の冒険者しか攻めてこなかったが、今後もそうとは限らない、と考えたことだ。 


「もし、何十人もの大規模パーティーで攻めてきたら……?」  


 このボス部屋で真正面から迎え撃つのは危険だ。部屋が無駄に広いだけにすぐに囲まれてしまいそうだ。 


 だからこそ、俺は考えた。大人数をたった4人で迎え撃つ方法を、


 そしてふと思いついた。  


 ──「だったら、ボス部屋そのものを、砦にすればいい」



 この瞬間俺の"要塞化計画"が始動した。


 まず、ボス部屋の入口を中心に、三重の城壁を作る。これには土初級魔法 Lv5の岩障壁をメインで使う。この魔法は戦いの最中、敵の足止めや簡易的な防壁などで手軽に発動することができる。しかし、その分強度は脆く壊れやすい。


 だがこれに【守護部屋の主】を使用することで凶悪なものに昇華させることができる。


 まず第一の壁としてボス部屋の扉を囲むように岩障壁を展開して侵入者の侵攻を食い止める。その裏に第二の壁として第一の壁をさらに囲むように、より高い壁を設置する。この壁から第一の壁を越えようとするものを迎撃することができる。

 当たり前のことだが上にいる者の攻撃の方が下にいる者の攻撃より強力になる。この世界にも重力がかかっているからだ。

 最後に第三の壁だ。最も高く、最も堅牢な防御壁でここを越えない限り、俺がいる玉座の間に辿り着くことはできない。


 通常ならこれだけの防御壁を作るのに膨大な魔力と時間がかかるがこの部屋の特典と【魔力精密操作】の力で数分で完成させることに成功する。  


 そして、ここで【守護部屋の主】を発動し、この壁をダンジョンの一部として固定する。ただの"障壁"ではなく、に変えたわけだ。これのおかげで脆い壁が強固な砦になった。


【守護部屋の主】で広範囲の地形を変えるには膨大な時間がかかる。だからまずは岩障壁で壁を作り、それを包み込むことで短時間で強力な防壁を作ることができたのだ。


 これだけでも十分凶悪だがこれだけでは終わらない。  


 ここからが"真の地獄"の始まりだ。  


 俺は、【術式付与】を使い、三重の壁の上に土初級魔法Lv4の土人形の術式を刻んだ。

 この土人形は、単なる置物ではなく簡単な命令ならば従う、操り人形のようなものだ。ただこれを兵とするには攻撃力が足りない。 


 だからここに【術式改新】を使用して土人形の術式に新たな術式を組み込む。


 ──組み込んだ術式は、炎初級魔法Lv8の炎壊だ。  


 炎壊とは、自分ごと広範囲を焼き尽くす高火力魔法だ。通常なら、使い手が巻き添えになって大ダメージを食らう、諸刃の剣のような魔法だ。  


 しかし、この術式を"使い捨ての土人形"に付与することで……  


 ──完成するのはお手軽な、超強力追尾型爆弾だ。  



 さてここでこの部屋に入ってた哀れな侵入者の末路を説明しよう。


 ボス部屋に入ってきた侵入者は──  


 1. まず、不意打ちの炎魔法を食らう。 

 2. 次に、目の前に立ちはだかる"巨大な三重の城壁"に驚く。  

 3. さらに、その壁の上から、無数の爆撃人形が飛び降りてくる。 


「……これ、突破できるやついるのか?あまりにも、えげつなさすぎる……!」


 我ながら、"悪意の塊"のような防衛システムが出来上がってしまった。  


 俺はダンジョンボスだが、正面から戦う必要なんてない。そんなダンジョンボスは時代遅れだ。

 なういダンジョンボスは罠と地形を駆使して、一方的に敵を蹂躙するものだ。


 俺は自分が生き残る為に一切妥協をしない。


 誰が攻めてきても返り討ちにしてやる。







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