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第18話

「じゃあ、明日に備えてさっさと寝るか。マルヴァン、警報器の確認だけ頼むわ」


「承った」


「俺も行くよ」


「ああ、頼む」


それからもチームワーク醸成のためと称してあれこれ話しかけられ、エリザヴェータが基本的には無難な、たまにすっとんきょうな返答をするという、これまでも繰り返されてきたやりとりをしている間に、辺りは暗くなってきていた。

セラフィナは周囲に仕掛けた警報器──何者かが侵入したら警報を発する魔術具の確認を指示して、場を解散させた。

一昔前までは、交互に起きて番を行ったりと夜間警戒をしなければならなかったが、こうした便利な魔術具の登場により、しっかりと休息が取れるようになっていた。

その警報器の確認をサブリーダーのマルヴァンとジュリオに任せつつ、自分もさっさとタープの下に寝転がる。


「私たちも寝よっか」


「はい」


その様子を見てまだ話し足りなさそうなアメリアも話を切り上げて提案する。

エリザヴェータからすれば人間と同じような睡眠は必要でないのだが、基本的にオートマタであるということは秘匿しようと考えているようである。

その思考の経路はうかがい知れないが、間違ってはいないだろう。

実際にどうなるかはともかく、確実に厄介ごとを招き寄せることになるだろう。

なにせ彼女は超技術の塊だ。

以前も述べたとおりオートマタとは基本的に遺失文明時代の遺跡から発掘品である。

それを現代──前世アレクセイが生きた一千年前当時──の技術で再現したというのは、紛れもなく偉業である。

あのマッド野郎の残した功績は枚挙に暇がないが、その中でも燦然と輝く功績のひとつであることは間違いない。

そんな彼女を狙う輩が出てくることは想像に難くない。

彼女をどうこうすることが可能かどうかは別として。

ちなみに彼女が目を覚ました、魔法都市国家アルカトラの内海を挟んで北側に位置するザハラムトラ=アルディアに置かれた前世アレクセイの研究所もアレクセイの死後、様々な有象無象が押し寄せたのだが遺されたセキュリティを突破できず、また残された人員──アレクセイを師と仰ぐ者や彼の研究を支えたパトロンなど──の働きかけによって不干渉とされ、現代では観光地のひとつとなっている。

ともあれ、そう考えれば彼女が自身の出自を隠すという判断をしたのは妥当であるといえよう。

ただしこのポンコオートマタはそこまで考えておらず、おそらくなんとなくみたいな理由でそうしてそうではあるが。


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