「結局、龍種相手でもひとりでやっちまったな」
「いえ。みなさんが気を逸らしてくださったからですよ」
「またまたご謙遜を~うりうり」
ところ変わって帰路の途上、再び野営中に焚き火を囲って会話をしている。
別にエリザヴェータは謙遜しているわけではなく、単なる事実として述べていた。
実際に、この中で彼女以上に火力を出せる人間はいない。
大陸全土で見ても、高位に位置するであろう。
しかし現在の彼女の状況では、そもそも当てる術が乏しい。
拘束や投射系の機能は休眠状態となっているため牽制用の選択肢がなく、まっすぐ向かっていって正面から叩き込む以外の方法がないのだ。
そのため、通常のモンスターであればともかく、龍種のような知性と実力のあるものに対してはあまり有効ではないのが実情である。
全盛期、というより機能が十全に発揮されているとまではいかずとも、過去に強者から学習した戦闘に関するメソッド──都合よく最初から戦闘プログラムが組まれているということはない──さえ残っていれば、例え極端に射程の短い攻撃でも当てられるのだが。
ともあれ、そんなことは知る由もないシルヴェリア小隊の面々からすれば、謙虚な態度に見えなくもなかった。
「今後の予定だけど、一旦マクシムさんと合流して報告をする。そこで報酬の山分けとなるんだけど、アタシらも貰っちゃって構わないのかい?」
「ええ。先ほども言いましたが、私ひとりではなし得なかったことです。それに、私はそこまで金銭を必要としておりませんので」
「そうかい。ま、あんたが良いって言うなら良いんだけどさ。それはそれとして、どうだい、あんたさえ良けりゃシルヴェリア小隊に入らないかい?」
「申し訳ありません。私はマスターを探す旅の途中ですので」
「そのマスターさんってどんな人なの?」
「私のすべてです」
「きゃー! それって特別な人ってことだよね!?」
「特別……? ではありますね」
アメリアがきゃいきゃいと横道に逸らす話題をどうにか引き戻し、セラフィナが続ける。
「勧誘の件は残念だけど、どっちみちアタシらも本国には用があるんだ。テル=エメシュを目指すなら、行けるとこまでは一緒に行こうじゃないか」
「……そうですね」
別にエリザヴェータのアレクセイを探すという目的からすれば、旅の共連れなどは誰でも良いはずなのだが、それでも拒否しないあたり彼女もシルヴェリア小隊の面々を受け入れているのだろうか。