魔物との遭遇など、大小さまざまな出来事はあったものの、ほぼ同時に三班とも目的地へと到着した。
ガストンが全体を見回し、声を上げる。
「ひとまず三チームとも、無事にここまで来られたな。ヴェルディからある程度連絡は受けているが、各班なにか報告があれば頼む」
真っ先に口を開いたのは、紅蓮の翼班のリーダー、ロイドだった。
「うちらの班は、マッドラットばっかに出くわしたんだが……数が異常だった。それに奴ら、どこか怯えてるような気配あったんだ。何かから逃げてきたって印象だったな」
魔物の大量発生。そして、怯えた様子──。その報告に、場に不穏な空気が漂う。
続いて、エスピアが口を開いた。
「我々の班も同じような状況でした。遭遇したのはブラックホーンディア。群れることのない魔物が、一度に四頭も……。彼らも、何かから逃げてきたように見受けられました」
その言葉に、フィンが静かに応じた。
「おそらくだけど、俺たちが倒したベアファングを警戒してたんじゃないかな。あれ、森の主って感じだったし」
確かに、あれだけの強さなら他の魔物が恐れるのも当然だろう。
俺たちは、魔物の異常行動の原因をベアファングにあると結論づけた。
——だが、この時の俺たちはまだ知らなかった。
これから
周辺を警戒しつつ探索していたとき、エスピアが洞窟の存在を知らせてきた。
俺たちは全員でその場所へ向かう。
「——あそこです。嫌な気配が漂っていますね」
ガストンが腕を組みながら唸る。
「うーん……確かに、なんかいるな。みんな、気を引き締めてくれ」
その直後だった。
(ズダダダダダダダダッ‼)
洞窟の奥から、おびただしい数の黒い影がこちらへ向かって走ってくる。
「なっ、なんだありゃー⁉」
「リーダー君、あれはホーンラビットとマッドラットの大群だ! 一体一体は弱いが、数が多すぎる! 一旦退くぞ!」
フィンの指示で撤退を選んだものの——俺は、またしてもやらかしてしまった。
「うわぁっ(ドスンッ!)」
足元の木の根につまずき、盛大に転倒した。気づけば、ホーンラビットの群れがすぐそこまで迫っていた。
「旦那! 危ないっ」
(ブシャッ!)
「ゔぅっ‼」
「ティ……ティガー‼」
「い、今のうちに……逃げるっす……」
ティガの胸に、ホーンラビットの鋭い角が深く突き刺さっていた。
さらに、後続の魔物たちの追撃が彼の身体を貫き──ティガはその場で絶命した。
間近でそれを見ていた俺は、呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
——そして俺もまた、魔物の餌食となるのだった。
「(足元には、細心の注意を払うんだぞ、未来の俺……)」