今回も三チームとも、ほぼ同時に目的地周辺へと到着した。
周囲の探索が始まると、ティガが例の洞窟を見つける役目を買って出てくれた。
「みなさん! あっちの崖の下に洞窟があるっす! 中に、たっくさんの魔物がいるっす!」
その報告を聞いたガストンが、すぐさまそちらへと向かおうと進言する。
「よし、みんな、そっちへ行くぞ!」
「あーっ、まだダメっす!」
「……まだ? なぜまだダメなんだ?」
「あ~、えーっと……そ、そう! おいらに、いい作戦があるっす!」
「ほう。それは、どういう作戦かな?」
「まず穴を掘って、かくかくしかじか——」
ティガは、俺と練った落とし穴作戦を、みんなに伝えてくれる。
「よし、分かった! では、穴を掘る者、竹槍を作る者、投石などを準備する者で分かれてくれ! エスピアたちは、洞窟とその周辺の見張りを頼む」
「了解いたしました」
ガストンの指示のもと、準備は手際よく進んでいく。
やっぱり、リーダーはガストンさんで良くないか? と思いつつも、この作戦を考えたのは俺だ、俺にしかできない役目なんだと、自分に言い聞かせた。
ティガ率いる穴掘り集団、アンガス率いる力自慢たち、ボアーズ率いる職人チームのおかげで、一時間ほどで大きな罠が完成した。
「できましたね、旦那!」
「ああ、みんなすごいな。これで魔物たちを一掃できそうだ!」
「にしても、例の力を隠しながら、いろいろ説明するの……大変っすねぇ」
「だろ⁉ いや、ほんとそれな! 分かってくれる仲間が増えて、俺は嬉しいよ」
「おいらも旦那の力になれるんで嬉しいっす! これからも、なんでも相談してくれっす!」
「ああ。ありがと、ティガ」
魔物の陽動には、ヴェルディと、足自慢のコボルト三匹——イダ、テン、シンが向かってくれることになった。
各自が定位置につくと、一気に緊張感が高まる。俺は生唾をゴクリと飲み込んだ。
ガストンが号令を出す。
「——よし、ヴェルディ! 行って来い!」
「あいよっ!」
ヴェルディとコボルトたちは、一気に洞窟へと駆けていく。
あっという間に、入り口付近へと迫ったそのとき——
(ズダダダダダダダダッ‼)
来た……! ガストンが叫ぶ。
「退け! 全速力で戻ってくるんだ!」
あまりの数に、仲間たちからどよめきが聞こえ始めた。
「なんだ、あの数は⁉」
「いくらなんでも多すぎだろっ⁉」
「こ、こえぇぇぇ~」
あの数を目の当たりにするのは二度目だが、俺も同じ気持ちだった。だが、今回は勝算がある。
俺は気高く振る舞い、みなを鼓舞した。
「大丈夫です、みなさん! 絶対うまくいきます。さあ……来ますよ!」
落とし穴の手前で、コボルトたちが一斉に跳躍する。
次の瞬間——
魔物たちが、術中通りに次々と穴の中へと落ちていく。
すべての魔物が見事に罠へと誘い込まれたのを確認し、俺が指示を出す。
「今です! 石を投げ入れてください!」
「うおぉーっ!」
「とりゃーっ!」
(ゴロゴロゴロゴロッ!)
すべての石が投げ入れられると、森は再び静寂に包まれた。
「……やりましたね」
「大成功だな、桃くん!」
「素晴らしい作戦じゃったな、桃太郎くんよ!」
「ありがとうございます、ガストンさん、アビフ様。でも、俺一人じゃこんな大きな罠は仕掛けられませんでした。これは、みなさんのおかげです。本当に、ありがとうございます」
俺が深々と頭を下げた、その時だった。
「危ないっ!」
「えっ……⁉」
落とし穴の隙間から、命からがら這い出てきたホーンラビットが、俺の背後を狙って跳びかかる——
(バシュッ!)
「……ふぅ、危ないところだったぜ」
俺を助けてくれたのは、ボアーズさんだった。
射止めたホーンラビットが、彼の槍で串刺しになっていた。
「あ、ありがとうございます。ボアーズさん!」
「うむ。油断大敵だぞ」
「は、はい!」