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第2話 先生


 「えーーーーーーー!!! 」


 大きく声を上げたのはリーナだった。

先生が来るのは村の子供にとって一大イベントだ。

今日来るのは“属魔アトマ”について教えてくれる先生で、先生が訪れる日は、勉強だけでなく、村の外の話や面白い体験談が聞ける貴重な時間なのだ。

そしてその属魔アトマとは、不思議な術や技を出せる力のことで、大人になる頃には大なり小なりみんなが使える力のことを指す。


 「忘れてた! 」

 「ほれ、はよ教室に……」

ハゼンが振り向いた時には既に他の子供たちは教室に向かって走り出していた。


 「ありがとう、じいちゃん!」アレトも走り教室に向かう


 教室ではすでに掃除が始まっていた、

先生が来る日は、みんなで教室をきれいにして、きちんと座って迎えるのが決まりだ。
普段この空間は使っておらず、木の窓は開けっぱなし。
そのせいで、葉っぱや砂が床に積もってしまう。

 だが、今日の草むしりをしていた時よりも、みんなの動きがテキパキとしている。
誰に言われるでもなく、それぞれが持ち場を決めて掃除し、すぐに席へ着いた。


 アレトは教室全体が見渡せる窓側一番後ろの席に座った。

先生が来るまで、まだ時間はある。
しかし、子供たちは静かに待つどころか、ワクワクとした表情でワイワイと話し込んでいた。

 特にリーナは、教壇きょうだんのすぐ前――先生との距離が一番近い席をしっかりと陣取っている。
リーナの将来の夢は“先生”になること。
そして、その夢を抱くきっかけをくれたのが、今日、首都スセイリアから来る。


 先生『ゼフィール』なのだ。


 窓の外に目をやると、少し遠い空に黄色い龍が4匹、翼を広げ悠々ゆうゆうと飛んでいるのが見えた。

 龍を間近で見ることは、大人でさえなかなか経験できるものではない。
とはいえ、こうして空を舞う姿を目にするのは、それほど珍しいことでもなかった。


 (…ラッキー、龍見れた)


そんなことを思いながら、ぼんやりとながめる。

 しかし、ふと、さらに遠くの空に、黒と白の二つの影が浮かんでいるのが目に入った。


 (……ん?なんだ、あれ?)


 見間違いかと思ったが、確かに二つの影はそこにあった。
黒と白、その色の組み合わせにアレトは眉をひそめる。


 (あれも龍なのかな?でも、白と黒の龍なんて……聞いたことない)


 アレトは、これまでに何度か龍を見たことがある。
赤、青、黄色、この三色なら、遠目とおめとはいえ何度も目にしてきたし、15年程度の人生でも、それぞれ20回くらいは見ているはずだった。

 だが、黒と白の龍は一度も見たことがない。

それどころか、そんな色の龍が存在するという話すら聞いたことがなかった


 その二つの影のことを考えていた時に、教室がソワソワし出す

姿は見えないが教室の外で先生の声とハゼンの話し声が聞こえた。教室の入り口から二つの影が重なっているのが見えている


 「では、ハゼンさん、私は生徒たちのところに…」


低くもき通った男性の声が聞こえたと同時に一つの影が教室に向かって入ってくる、先生だ。


 先生が教室に入ると、無邪気な子供たちの笑い声が響き渡る。


 彼は真っ赤な腰まで届く長い髪で赤い目に黒い眼鏡、柔らかなブルーとホワイトが混じり合った、風を感じさせるような軽やかなローブをまとい、穏やかな微笑みを浮かべて子供たちを見渡す。

 胸元にはスセイリア王国の紋章が小さく刺繍ししゅうされ、かすかな光沢を放っている。その紋章は、彼が王国からの信頼を受けている証でもあり、王国の尊厳そんげんを背負っていることを示している。


 先生は肩の横に手を掲げ、指を上に立て“火の玉”を出す。しかもその周りには細かい土の粒子りゅうしが規則的に火の周りを旋回している。


 子供たちの好奇心を引きつける。穏やかな声が賑やかな教室に広がり、学びの楽しさを伝えていく。子供たちはその優しさに包まれ、彼の微笑みを見上げながら、心地よく学んでいる。


 「皆さんさすがですね、前回来たのは40日前だというのにここまで覚えているなんて、ではリーナさん、改めて属魔アトマの基本属性とその上位はなんですか?」


リーナは嬉しそうに立ち

 「属魔アトマの基本属性は5つあってそれは、<火><電><風><水><土>で、

上位は<獄炎><雷><嵐><激流><岩>です!」


 「はい!よく答えれましたね。そうです属魔アトマの基本は5つで上位も5つです、属魔アトマの適性は皆さんの年齢ではひとり一つです。そして今ここにいる皆さんは属魔アトマを使える人とまだ使えない人がいますね、運よく外は晴れています。今日は使えない人には使えるようになってもらって、使える人には改めて実感してもらいましょう。皆さん外に出ましょうか」

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