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第3話 属魔

「今回は正確に診断するための道具がありませんが少々古めのやり方があります。皆さんなんの特性も持たない手のひらサイズの枯れていない葉っぱを、一枚ずつ持ってきてください」


 『わかった! 』子供たちはキラキラと輝いた目で返事をし、一目散に木の葉を取りに行く。特にまだ属魔アトマが発動していない子供ほどはしゃいでいる。今回の診断がとても嬉しいのだ。


 アレトは自分が風属性かぜぞくせいと理解していたので診断に楽しみではあるがあまり意味はなく、一番近くに落ちてある葉っぱを手に取った



 「はい、皆さん準備できましたね。それでは葉っぱに、手のひらから何かを出すように意識して3秒ほど擦り合わせてすぐに開いてください! 」


 『いーち、にー、さーん!!』手を開く


すぐにみんなの違いが出た。


 「葉っぱの色が変わった子は“火属性ひぞくせい”!

ちぎれている子は“電属性でんぞくせい”!

手から離れていった子は“風属性かぜぞくせい”!

しんなりしている子は“水属性みずぞくせい”!

ボロボロと崩れている子は“土属性つちぞくせい

が一番皆さんにとって向いている属魔アトマ基本属性きほんぞくせいになります! 」


 俺は火だ!——私はお母さんと同じだなど様々な反応が湧き上がる。喜び飛び跳ねた少年が後ろ向きに頭から転けそうになる、


その先には大きめの岩が――!!



 —「っと、危ないですよ」先生はその少年の腕を掴み引き上げた。

少年はキョトンとしながら先生にお礼を言っていた。



 アレトは、先生の動きをじっと見つめながら、そっと自分の手のひらを開いたが、そこには、何もなかった。


 「……あれ? 」


 思わず、手のひらを覗き込む。
やる前に力が抜けて落ちたのか? それとも、そもそも最初から持っていなかったのか?


 「もう一回……」


少し焦りながら、もう一度試そうとしたその時――


 「お兄ちゃん!あたし土属性だった! 」


リーナの弾んだ声が響いた。

見ると、リーナの手のひらには葉っぱが細かく千切ったかのように、ぽろぽろと舞っている。

 目を輝かせながら、まるで宝物を見つけたかのような表情でアレトを見つめていた。


 「おお!やったな! 」


 アレトが驚きながらも笑顔を向けると、リーナはさらに嬉しそうにぴょんと跳ねた。


 「さぁ、次は理解したところで実際に属魔アトマを出してみましょう。」

先生が、優しく微笑みながら他の子供たちを見渡す。
アレトは戸惑いを振り払い、深く息を吸った。

 (……俺は、風属性って分かってるし次の段階に進もう。)


……子供たちの集団より後ろに3メートルほどの距離に上空からヒラヒラと一枚の葉が落ちていった。…



属魔アトマというのは、自分の適性を自覚できただけでも、だいぶ出しやすくなります。しかし、普通であれば個人差はあるものの、習得には半日から3日ほどかかるでしょう。」


子供たちは「えぇ〜、そんなに?」と、少し不満げな声を漏らす。
すると、先生はクスッと笑いながら、ローブの内ポケットに手を入れた。


 「ですが、今回はせっかちな皆さんのために、こんなものを持ってきました。」


 そう言って取り出したのは、円柱状の白い棒。
金の装飾が施され、よく見るとスセイリア王国の紋章が小さく刻まれている。


 「これは、スセイリア王国特製の体内の“魔基路マギロ”を整える棒。

その名も―〈属性路循環器アトリロードサキュレーション〉―です! 」


 子供たちは「おぉ〜! 」と興味津々の表情を浮かべる。
先生は棒を軽く振りながら説明を続けた。


 「この棒には、属魔アトマの基本属性5つが込められています。本来は、属性関連の病気の治療に使われるものですが……」


そう言って、優しく微笑む。

 「握ると、5つの属性が体内を駆け巡り、“魔基路マギロ”を整えてくれるのです。
 この原理を使って、皆さんの“魔基路マギロ”を整えましょう。」


 先生の指示で、子供たちは順番に棒を手に取っていく。
手のひらで包み込むように握ると、じんわりとした温かさが広がり、身体の奥を何かが通り抜けていくような感覚がした。

 仲良く最後の一人まで渡し終え、先生が再び棒を受け取る。
そして、にっこりと微笑みながら言った。


 「実は――もう、これで魔法が出せるようになっていますよ。」

 『えっ!? 』

驚く子供たちを前に、先生は手のひらを軽く下に向けるジェスチャーをしながら続けた。


 「では、試してみましょう。
 手のひらを下に向けて――そこから何かが出てくるように、イメージしてください。」

子供たちは期待と不安が入り混じった表情で、それぞれ手を構える。
そして――


 「う、うわっ!? 」

 「すげーーー!! 」

 「やべぇぇぇぇぇぇぇ!!! 」


 子供たちの手のひらから、それぞれの属性が小さくとも、確かに現れた。


小さく燃え上がる火。


ピリピリと空気を震わせる電気。


ふわりと舞い上がる風。


手元からしっとりと染み出す水。


ポロポロと生まれ落ちる土の粒。

歓喜かんきの声が村中に響き渡る。
目を輝かせながら、子供たちは次々と自分の属魔アトマを試し始めた。


 「さぁ、お昼休憩にしますよ。」

先生は優しく微笑んだ。

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