日がしっかり沈み星と月明かりが地を照らす。テントに灯りがつき村の人々は付近にいるかもしれない野生のモンスターを刺激しないよう大きな音は出さず、全員が生還できたことを祝っている。
アレトとリーナはテント内にいた
「……なぁリーナ、俺ずっと引っかかってることがあって」
「お兄ちゃん多分あたしも同じ」
2人は龍と目があった時のことで、頭がいっぱいだ。
「あれ、なんだったんだろうな話しかけられているような感覚っていうか奥まで見られたかのような感じがしたというか……」
「お兄ちゃんそんな風に感じたの?何か不安そうだなとは思ったけど」
「あの状況だと当然ではあるけど、もう少し何か違う気がする。あの龍もう死んじゃったかな?」
「もうすぐ王国から騎士団が来るんだって、その人たちが明日の朝には龍の調査に行くんじゃないかって、みんな話してたよ」
「俺らが寝る頃に到着って先生が予想してた時間より随分遅いな」
「何か事情があるんだよ、きっと」
二人は無機質なテントの天井を見ている。テント外での密かな祝い声が聞こえる。
「そうだ森の出口らへんに野生のでっかい、
“
アレトは気持ちを切り替えるための提案をした。
※
「え〜、危ないよ。今は夜だしお兄ちゃんのその言い方だと少し森に入るんでしょ」
「いいじゃんか、リーナは気にならないのか?あのサイズ感だと5人は水だけで腹一杯になれるぞ」
「え〜!そんなに大きいの、嘘でしょ! 」
「ほんとだって、取りに行こうぜ」
「も、もう仕方ないな。先生にバレたら怒られちゃうから行くなら急ご」
リーナは少し乗り気になっていた
「よし、ルールを決めよう、モンスターが出てきたり目に入ったらそこでおしまいだからな。」
「わかってるって、お兄ちゃんヘマしないでね。レッツゴー! 」
「おい、場所知らないだろ! 」
テントを出て一目散に森へと駆け出した。村の人たちや騎士たちからは子供がただ騒いでいるようにしか見えていなかった。
テント群を抜ける直前、二人はさっと立ち止まり、素早く身を隠した。森と目的地の中間に、スセイリア王国の兵士たちが立っているのが見えたのだ。そこには厳しい表情の兵士が3人、槍を手に辺りを警戒している。
「あのへんにあったんだ、でも兵士の人たちが邪魔だな」
アレトは小声で
「お兄ちゃんこっちから回り込もう」
リーナは迂回のルートを示した。アレトは確認した後無言で小さく頷いた。
そして、二人はしゃがんだまま、
草むらの陰を使ってゆっくりと移動を始める……が何かにぶつかった。
「こら、何を考えとるんじゃお前たち、また良からんことを企んどるんじゃろ」
「ゲッ……じいちゃん」
「へへへ〜バレたかー」
そこにはハゼンが後ろで手を組み、弱々しくもアレトたちを見下げるように立っていた
「ゲ、じゃないわい、モンスターに襲われでもしたらどうするんじゃ」
少し不機嫌そうにハゼンは説教を始めようとした
「チッ、今日は帰りますか。」
「チじゃないわい!子供だけで森へ入るのは昔から……」
カーーーーーン、カンカンカンカンカンカン!!!
テントじゅうに高い金属音が鳴り響く
「なんだ!? 」
「こりゃいかん!アレト、リーナ森から離れるぞい」
『てきしゅーーーーーーーー!!!モンスターの大群!!方角は森より!! 』
「モンスター!?リーナ! 」
「じいちゃん!急ご! 」
リーナがハゼンの手を取り走り出した時には既に数種類のモンスターの大群が森から飛び出てきた!
「大群ってこんな量今まで気づかなかったのか!?」
3人は思ってもいない速さに足を止めて森の方を見てしまう。
一番早くに森を抜けてきた1匹の狼がまっすぐ3人の元へ走ってくる!!
「とにかく逃げよう、お兄ちゃん!」
「いや、あいつだけは間に合わない!リーナ!」
アレトは
「お兄ちゃん!」 「アレト!」
「うぉおーーっ!!」
アレトは考える間もなく、反射的に拳を振り上げた。計算も、次の行動も、何も考えられなかった。ただ目を瞑り、本能的に殴りかかったのだ。
その拳の軌道上には、狼の顔はないはずだった。しかし、突然、狼の周囲に突風が吹き荒れ、その流れに導かれるように狼の顔がアレトの拳の先に重なった。
--キャウワンッ!
悲鳴を上げながら、狼は吹き飛ばされた。だが、地面に落ちた次の瞬間には、すでに四足を立て直し、アレトを睨みつけていた。狼の牙が光り、再び
「<
その狼は飛びかかる間もなく、燃える矢に突き刺されていた。
『先生!』
「ゼフィールさん」
そこには少し息の上がったゼフィール先生が立っていた。
「アレトさんリーナさん、大丈夫ですか、それにハゼンさんも。とにかくここから離れましょう」
先生と共にテント群の中心部へと走り出したがアレトは森の中に違和感を感じた
(とにかくリーナと……なんだろう、あそこだけモンスターが群れて……)
四人は急いで走っているがアレトだけは少し遅かった。
「アレトさん急いで、出てきたモンスターは低級と呼ばれている部類なので大丈夫だとは思いますがもしもの……」
先生は何かを言っているがアレトは違和感の先に夢中になっていた
「!!--先生、先に行ってて!」
「!!--アレトさん、ダメです!」
ゼフィールがアレトを捕まえようとするも時すでに遅く、アレトはそのモンスターの群れの方へ走り出していた
「ハゼンさん、リーナさんを、ック<
既に10体程のモンスターに追いつかれていたのをゼフィールは確実に倒していく
(さっきの違和感の正体がわかった、人がモンスターたちに囲まれているんだ。一緒に逃げないと)
その群れへと近づくアレトの視界に映ったのは、カザミ村の者ではない必死に戦う少年だった。