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第17話 今後に向けて

 合流後、アレトとリーナを救護へと引き渡す。


そして森の中で見た光景をガルオスとアドリウスに説明した。


 「むぅ……そのアレトとリーナは誰にやられたんだ? 」

 「僕はその状況を聞いて、お2人が出会われた2人組の敵がその森にいる装束の人を殺したって考えるのが自然だと思います」

 「そうですね、私もそう思います。……がわざわざ胴と下半身を切り分ける必要が? 」


 「あの、灰色のラインの入った男の技で絶命したと考えるのが自然ですが……」

 「その死んだ男はそもそも、お二人のいう黒装束の男たちとの仲間なんですかね」


ゼフィールはため息をつき話題を切り替える。

 「もしかしたらアレトさんとリーナさんが見ていたかも知れませんし、彼らが目覚めてからにしましょう」


 「そうですな、では話を切り替えて。……二つあります」

 「僕も一つあります、お先にガルオスさん。どうぞ」


 「うむ、まずは村の者の避難だが、騎士団は貸せん。なんならアドリウスの隊も出来るだけ借りたい」

 「そうですね……私もそれは適切な判断だと思います」


 この場にいる3人は警戒しているのだ、今回の度重なる騒動は他国の陰謀や策略の可能性かも知れないと。それを前提とするならば、国境付近にあるカザミ村から目を離す訳にはいかないと。むしろ大袈裟おおげさに考えて他国からの侵攻侵略の可能性があると考えている。


 現状カザミ村付近の国境に面しているのは<ミカドリア王国><コガクシア聖典国>だ。


 「ど、どのくらい必要ですか?僕の隊200名程度ですけど……」

 「何人いれば、避難への先導、物資の移送があの人数分出来る」

 「80くらいいれば……」

 「ならば150貸せ」


アドリウスは少しうつむき、返事をする。

 「一番大変な思いをしているのは村の方々や子供たちですものね……貸しますよ」

 「アドリウスさん、流石に無茶では!? 」

 「でもー、カザミ村での異変は少し異常ですよ……セッカ隊は今、団長不在だし」


 「うむ、感謝する。よりにもよってセッカ団長は緊急会議でスセイリア城から出られんかったからな」

 「“伝線鳥メラインバード”はもう出しているのですか? 」

 「はい、先生が森に向かった後、すぐに出しています」


※『伝線鳥メラインバード』:目的地に向かって非常に速く、真っ直ぐに飛ぶ鳥。『線鳥ラインバード』という従来の鳥種から、早い個体のみを選別し掛け合わせ続けて育てられた種類。

どの速さから『伝線鳥メラインバード』なのかは曖昧あいまい


 「では、二つ目というのは? 」

 「先生にこれはお願いするつもりなのですが、“無覚病”患者を王都スセイリアに連れて行って欲しい」


 「えぇと、その感じだと僕の残った30人から、エアリアスについてからも何人か引き抜かれるってことですね……」


アドリウスは少し動揺した後、自分に喝を入れていた。


それを他所目にゼフィールは問う。

 「それは何故ですか? 」

 「先生の以前森から連れてきた、ヴァル?ヴォルクとか言う少年の母親がもしかしたら“無覚病”になりつつあるのかもしません」


ゼフィールは右手を口元に当てて考え込んだ。

 「…………やけに治療が長いと思ったら、そう言うことですか」


 「うむ、うちの隊の医者は“療の属魔リョウ アトマ”の使い手の中でも相当優秀な方だ。その医者の見解と意見になります。詳しいことは分からんがとにかくスセイリアに連れて行けとのこです」


 「そうですか、ではそのまま他の“無覚病”にかかっている方達もスセイリアに連れていきましょう」


 「そうですな。どうせ移動するならエアリアスに置いておくより、スセイリアで診てもらう方が良いでしょうな」


 「では、その予定でいきましょう。アドリウスさんの言おうとしていたことを聞いても?」


 「はい、エアリアスまで村の人を連れて“歩く”ことになりますが、一日8時間歩くとしても早くても5日、最悪8日かかると思って下さい」


 「“魔吸馬アトロップ”だと急いで6時間ぐらいが普通の距離ですしね……今回は徒歩なのはそうですが子供の存在がありますからね……」


※『魔吸馬アトロップ』:物理的な食事を取らない馬。草木など自然に発生する微細な“属魔アトマ”を吸収して活動するため、口が存在しない。人が乗ると、その人からも属魔を吸い取り、吸い続けられる限り全力で疾走し続けることができる。僅かな属魔で長時間活動出来るが子を産まず、全てが“第一世代”の野生産である。


 今回アドリウス隊はその馬を使ってここまで来ている。


 「ここは、気合いで乗り切ってください……としか言えませんな……ガハハ! 」


 『笑うところですか!? 』


 「先生みたく頭は回らないですが、どうしようもない時は笑うぐらいしか私には出来ませんからね、ガッハッハッハッハ」

 「そうですね……ゼフィールさん、一緒に頑張りましょう! 」

 「おやおや、頑張るのは村の方たちですよ」


 そしてその場では、その夜のために数個のテントが設営された。

しかし、それは負傷者や病人を優先するものであり、大半の騎士たちや村人、そして子供たちは、空の下で野宿を余儀なくされることとなった。

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