「さて、あの時、叫んでた星さんの願いは、
確か、虫さんになって異世界に行きたいでしたっけ?」
「……違いますね!“無視されたくない”と
”異世界に行きたい”です。」
この女神、ふざけているのか?
なんだ虫になって異世界行きたいって、いまの人生よりハードモードじゃないか!
な、なんかこの女神、笑ってない?
「ふふ、星さん、良かったですね。ここにきてからもう3つも叶ってますよ?」
「え……3つ?」
「はい!“まず仕事を辞めたい”、次に“休みたい”。そして、“無視されたくない”ほら3つでしょ?」
目の前の女神は訳の分からないことを言いながら指を3本たて俺の目の前に突き出してきた。
「……は?それは強引すぎますって!最初の2つはまだしも、最後の1つは何もしてないじゃないですか!」
「今、ちゃんと私が相手してあげてるでしょう? 全部完了です♪」
いやいや、それで完了って言い張るの?反論しようとした瞬間に追撃が飛んでくる。
「願いは叶いましたから。感謝してくださいね?」
微笑みとともに、女神の言葉が俺の反論を押し潰した。
この女神、俺に何も言わせない気だ。ここで熱くなっても無駄だ、重要なのはこの他の願いだ、冷静になれ、俺!
俺は、落ち着くために一度、息を整える。
「ふぅ……わかりました。言いたいことがないかわけじゃないですけど叶えてくださってありがとうございます。後の願いについてどうなっていますか?」
「その前に、星さんに1ついいですか」
すごく真剣な顔になった......
え、なんだろう、やっぱり願いの数が多かったか?少し不安になりながら返答した。
「はい、なんでしょうか」
俺の方にゆっくりと詰め寄ってきた。
「私、自己紹介しましたよね?なのにずっと女神、女神って、私にも名前があるんですよ?」
そう言えば、確かに、ずっと女神って呼んでたかも、でも神様を名前で呼ぶなんてそんな友達みたいないいのか?
「名前で呼んでもいいんですか?」
目の前の女神がにっこり笑った。
こんな感じ笑い方もできるんだ……俺は少し目の前の女神に見惚れていた。
「わかりました。恐れ多いですが本当にいいんですね?」
「そんなに緊張しないでくださいよ!名前を呼ぶだけなんですから」
ちょっと恥ずかしい気持ちを押し込め、目の前の女神様の名前を呼ぶ。
「よろしく、ヴ、ヴィーナス」
噛んだああああ……!サラッと言えなかった。
なんか、意識しているみたいで恥ずかしい。俺があたふたしながらヴィーナス様をみると、ん......?ヴィーナスも固まってる、もしかしたら名前呼んでもらえて照れてるのかな?
「いや、照れてませんし、星くんの噛んだことなんか気にしませんよ!私のこと、何呼び捨てにしてるんですか、お馬鹿なんですか?」
さっきまであんなにいい笑顔だったのにめっちゃ怒ってる。
え、ダメなの……
「私、女神なんですよ?呼び捨てにしていいはずがありませんよね?様をつけなさい、様を!あと敬語も!」
あまりの迫力に追わずたじろいでしまった。
「……わかりました、ヴィーナス様。これでいいですか。」
「はい、いいですよ!
では、残りの願いについても話しましょうか」
ちゃんと確認したのに、呼び捨ての流れだったのに怒られた......俺はすこし、ショックを受けていた。
「星くん、そういうのいいですから次行きますよ!」
「......はい」
残りの願いはあと4つ!