そうだよ、残りの願い。
「ヴィーナス様、俺イケメンになれるんですよね?」
おれは、期待の眼差しを向けると目の前のヴィーナス様は目を瞑って言った。
「いえ、無理ですね」
え、嘘だ……そんなのって
「そうだ、イケメンじゃなくてもハーレムはできる!ですよね?ねぇ、ヴィーナス様!」
ヴィーナス様は俺から目線を伏せる。
「……無理ですね」
その言葉に棒立ちになった。
イケメンもハーレムも無理、重要な願いが2つもだめ……嘘でしょ?
「な、ならお金持ちにはしてくれますよね?」
藁にも縋るように目の前の女神にすがる。
ヴィーナス様は俺に優しく語りかけるよう聞かせた。
「いいですか星さん、最初からお金持ちになったのを見てても私が楽しくないじゃないですか?……なのでダメでーす」
バッテンポーズをとりながら言った。
は?今なんて……「見てても私が楽しくない」って言ったの、いや俺は楽しいよ!ふざけるなよ!なんで俺があんたを楽しませなきゃいけないんだよ。しかもなんだよ、そのちょっとイラッとくるバッテンポーズは!
この女神様、いや、ヴィーナスに一回立場をわからせないといけないなこれは!
そう決意し、目の前ヴィーナスを見つめると
目を細め、口元を歪め悪魔のように微笑んでいた。
「星さんにできるんですか?立場をわからせるなんて」
忘れてた、この女神、心を読めるんだった。
そんなことで弱気になるな星、かましてやれ!
「で、できますよ!さては、びびってるんだヴィーナス?」
目の前の女神の雰囲気が変わった。
その空間がとてつもなく冷たく重い空気になった。
「へぇ〜、では、どうぞ!倍返しでやり返される覚悟はあるんですよね」
え、何、この空気、めっちゃ苦しいんだけど。 てか、倍返しって何?あれ、俺の膝が笑ってる?ヴィーナス様の放つプレッシャーに完全に怯えながら質問する。
「ヴィーナス様、そのですね倍返しとはどんな内容ですか?」
「様なんかつけないで呼び捨てでいいですよ?
そうですね、例えば、星さんがつい先日、女性経験がないことに悩んで行こうと———」
俺はヴィーナス様の言おうとした言葉を途中で遮った。
「ヴィーナス様、お、俺が悪かったです。ちゃんと敬いますから!」
今まで漂っていた冷たく重たい空気が無くなった。
許してもらえたか……?
ヴィーナス様を見ると肩を少し震えさせながら笑っていた。
「ふ、ふふ、冗談ですよ。イケメンにならなくても大丈夫ですよ……そのままのお顔で充分じゃないですか」
え、それって……
ヴィーナス様から見て俺ってイケメンの分類に入るってこと?
ヴィーナス様に顔を合わせようとするとすっと逸らされた。
「なんで、顔を逸らすんですか。まだ何も言ってませんよ!こっち見てください」
やっぱり……イケメンになりたかった。
俺はガックリと肩を下ろす。
「そんな落ち込まないでください。今回可愛い反応に免じて、許してあげますから、次はないですよ?」
「次、やったらどうなりますか?」
ヴィーナス様は顎に手をやりながら答える。
「そうですね星くんの物語をダビングしてるので一緒に黒歴史の鑑賞会でもしましょうか?」
ダ、ダビング……久しぶりに聞いた。
この女神様って結構、歳とって、いや神様だから普通か、歳っていくつなんだろう1億とかそんな感じか?
ヴィーナス様の身体をしたからゆっくりと見ていくと冷たくなった瞳が俺をじっと見つめていた。
「星くん、見えてますからね?それと私は、そんなに歳はとっていません。……本当、不敬な子ですね?今からでも始めましょうか、鑑賞会?」
そんな地獄の鑑賞会なんて絶対やりたくない。俺は焦ってヴィーナス様に謝罪をする。
「すみませんでした。もう、考えるのやめるのでそれだけはやめてください。」
目の前の女神はため息をついてた。
「まったく、次はないと言ったばっかりなのに、いいですか?仏の顔も3度までですからね?」
いや、ヴィーナス様、仏じゃなくて神様じゃん
「み・ま・す・か?」
「もう、心の中は勘弁してくださいよ!
反射的に出て来るんですから」
「じゃあ、ちゃんと気をつけてください!」
そんな無茶苦茶な、できるわけないじゃん
「頑張ってください」
ダメだ、もう、俺が話さなくても会話が続いてしまう……まって、そう言えば!俺は1つヴィーナス様に質問をした。
「なんで俺のこと見てたりダビングなんかして保存してるんですか!」
「なんでって……?趣味だからです♡」
趣味って……どんな趣味だよ!
もしかして、俺のことが好きだっ——
「いえ、違いますよ?」
そんなに、遮ってまで否定しなくていいのに、俺のこと好きだからイケメンにしてくれなかったんでしょ?そうだよ、加えてハーレムなんかしたらヴィーナス様が拗ねちゃうか!さて、どんな言い訳をしてくるかな?
「じゃあどうしてですか?」
ヴィーナス様の雰囲気がまた変わった。
怒った時とも違う、絶対的に逆らえない女王様の雰囲気を纏ってる。
目の前の女神は左手で顎をなぞり、右腕でその肘を抱えるようにして、恍惚と上から見下ろしてきた。
ゾワッとした。
俺は、今まで感じたことのない空気に冷や汗をかく。怒ってるわけじゃない……なにか触れてはいけないものに触れてしまったそんな感じだ。
「ふふ、少し圧をかけるだけで、やっぱり可愛い……私、君みたいな情けない男の子の恥ずかしいところを見るのが趣味なんですよ。ダビングは、どういう時に使うかさっき言いましたよね?」
俺は、何も言えなかった。
そうだよ、この女神はあってからずっとドSだ。