ヴィーナス様は俺の目の前で指で“パチン”と音を鳴らした。その音ともに、俺の前には一つのテーブルと2つの椅子が現れた。
「えっ」
「ほら、星くん驚いてないで座ってください。これから長丁場になりますから」
驚きながらも、俺は、ヴィーナス様と向き合うように椅子に一度腰を掛けた。
「その椅子と机を取り出したのってなんですか?」
目の前で起きた非日常な出来事にテンションが上がり気がつけば、前のめりになっていた。
ヴィーナス様、楽しそうに指を鳴らすポーズをしながら答える。
「これは、魔法ですよ。こうやって音を鳴らすと大抵のことができます。神によってもやり方は全然違うんですよ。ほら、答えましたから次は星くんの番です!どういう特徴のメイドさんがいいんですか?」
正直、メイドよりも魔法が気になりすぎる。
そんな気持ちをグッと抑え込みメイド作りに意識を持っていく。
そうだ、まずは俺好みのメイドさんを作るのが先だこれから先、いっぱい癒してもらって2人で異世界を旅をするんだ。
俺はそんな光景を思い浮かべながら理想のメイドを答えていく。
「メイドさんの特徴ですね。わかりました。身長は俺と同じぐらい、髪はショートで黒髪、目はつり目でお願いします。」
ヴィーナス様はさっき取り出した紙とペンでメモを取り始める。
メモを取るために少し前のめりになる
「ふむふむ、星くんが好きそうな感じですね。性格はどうします?」
ヴィーナス様もメモとかとるのか……なんか意外、眼鏡とか似合いそうだな。
「いえ、神でもメモぐらい取りますよ?間違いが起きないようにするにはこれが一番手っ取り早いんですよ。」
そこは、神様も変わらないんだ……
ヴィーナス様がなんかすごいニヤニヤしてる
「星くん、眼鏡が好きなのはわかりましたから見惚れてないで性格を教えてください」
この女神すぐからかって来るじゃん….. 反応すると喜ばせるだけだ、それよりも性格をきめよう。
……でも、どうしよう、マジで悩むなクール系かツンデレ系、可愛い系、ダウナー系、迷う。これは迷うぞ、これ自分で決めても絶対、後悔するやつだ。
助けを求めるように視線を向ける。
ヴィーナス様、ヴィーナス様!!どうしよう?おすすめとかありますか?
顔を合わせると、ヴィーナス様の顔が少し驚いていた。
「星くん、ちゃっかり心の声で私と話そうとしないでください!」
え、ヴィーナス様は俺の心の声で会話してくるじゃないですか!
ヴィーナス様はため息をつきながら
「……わかりました、性格は星くんが1番好きそうなのを選んでおきます。」
この女神様最高かよ!マジヴィーナス様わっしょい!これはどんな子ができるのか楽しみ。
「ありがとうございます。ヴィーナス様」
ヴィーナス様は少し照れくさそうにため息をつく。
「まったくなんですか、わっしょいって……まだ終わってませんよ!本題はここらです。ドジっ子属性入れますか?」
ドジっ子属性……?
ドジっ子ってあれだよなミスするってことだよな?え、必要ないだろと考えていると
ヴィーナス様は信じられないものを見たような顔をしていた。
「メイドにドジっ子属性がいらないと本気で思っているんですか?……ありえないですね」
えぇ、そんな怒るとこ?
普通のことを言ってるよな……俺?
「いや、家事全般をしてもらうならミスがないほうがいいじゃないですか?」
ヴィーナス様が不満気にしながら口を開く。
「ミスしたらお仕置きできるんですよ?お仕置きしたくないんですか?」
この女神、お仕置きを連呼し始めたぞ……
俺は、この女神の言動に少し引いていた。
「いや、神様が何を言っているんですか?神様ですよね?」
「やれやれ、星くんはわかっていませんね?メイド=お仕置きですよ?これがわからないなんて………あっ、星くんは、そうでした、すみません……」
今まで熱くメイドを語っていたヴィーナスはいきなり哀れむような、しかしどこか優しさを含んだ表情に変わり、謝罪を述べた。
謝罪をする姿に慌てる。
「……どうしたんですか?顔をあげてください。なんでいきなり謝るんですか……?」
ヴィーナス様は顔を上げると
「すみません、グスッ、星くん……星くんは、女性経験がないから……お仕置きも、そもそも、女性の扱いも上手くできませんもんね」
……くそ、腹立つ、下手な泣き真似までして心配して損した。
何が腹立つって反論の余地がなくて言い返せないのが悔しい。ダメだここで煽り乗ったら絶対に負ける。……今は、引くんだ星、我慢だ星、無意識に拳に力が入る。
……あとでとっちめてやる。覚えてろよ。