「いや待ってください、数百年ってその間に俺死んじゃいますよ!はやく異世界に行きたいです。」
慌てる俺にヴィーナス様はため息をつく。
「ちゃんと対策していますよ!寿命の件は安心してください。ちゃんと長生きできるようにしてますから!それに星くんからしたら……ここも異世界じゃないですか」
……長生きできるんだ。
1つの不安がなくなり、よかったとほっと胸をおろす。
「そんなこともできるんですね……確かに、ここも異世界ですけど」
ふと言葉が止まってしまう。
「……でもなんか、その……思ってた異世界生活って感じとは、ちょっと、違うっていうか……」
「異論はないですね?」
もう、この女神……俺に反論させる気がない。
数百年も待つのか……俺耐えられるかなせめて、イケメンにだけでもなりたい。イケメンになれればこの女神を手玉に取ることだってできそうだし……
「待ってください!寿命関係を調整できるならやっぱりイケメンにすることだってできるんじゃないですか?」
「くどいですよ、できてもやりません!星くんがイケメンになったとしても私を手玉には取れませんから諦めてください。」
できてもやりません!?
やっぱりできるよな、ここまで言っても無理なら仕方ないか……まあ寿命の件が大丈夫なだけでもよしとしよう。
「でも、数百年も一緒に生活をするってことになってるんですけど俺、……男ですよ?大丈夫ですか?」
ヴィーナス様が、ニヤニヤしながら俺をからかってくる。
「チェリー君には私の魅力は刺激が強すぎましたかね……?私は大丈夫ですよチェリー君。私に惚れちゃダメですよ……?」
「チェリー君……?」
めっちゃ可愛いからってくそ、我慢だ我慢。
「星くんみたいな男の子をチェリーボーイっていうんですよ?ご存知ないんですか?」
いや、意味は知ってるよ、なんでいきなり呼ばれたか疑問だったんだよ!
俺のこめかみに青筋が入るのがわかる。
こっちだってヴィーナス様に思ってることあるんだよ、言う度胸はないけど。
心の中で目の前の女神を罵倒し、ゆっくり視線を合わせていく。
あ〜あ、ヴィーナス様って美の神だからもっと綺麗で、胸も大きい女性だと思っていたのにこんな貧乳女神だったなんて……
するとヴィーナス様は腕を組みながらこれまで見たことのない綺麗な笑顔をしていた。
「ふーん、貧乳女神って言いましたか……いい度胸です。ここにきてから不敬が過ぎます。これで……3度目です。……覚悟できてますね?」
「まってください、貧乳女神だなんて一言も言ってません、思っただけです、無罪です。先に仕掛けたのそっちですよ!」
「そうでしたっけ?でもダメでーす、極刑です!」
何、俺の黒歴史をこの女神と一緒に見るの......?
絶対いじって来るじゃん、よし逃げ——
逃げようとする俺をヴィーナス様は呼び止める。
「星くん、逃げたらわかりますね?それに逃げられませんよ?」
その一言が俺の足を止めた。
そうだ、逃げるにしたってどこに逃げたらいいんだ......
神様(この神以外の)助けてください……悪魔がいます。
「ここには神は私しかいませーん!ダメでーす、でも、安心してください。コーラとポップコーンはつけてあげますから、味はどうします?しょうゆ?キャラメル?塩味もありますよ?」
最悪だ。なにを見せられるんだ、あれか?あの時のことか、いや、あれかもしれない。絶対に見たくない、1人で見るならまだしもこの女神とみたら……
ヴィーナス様、許してください。と念じヴィーナスと目を合わせるも目を逸らされる。
……ダメだ怒ってる無理だよな。
絶望に頭を抱えようとする姿をみて、ヴィーナス様は笑っていた。
あっ、今、笑いやがった絶対、心読んでるよ。
タチ悪いなこの女神……!
顔を引き攣らせながらヴィーナス様に反論する。
「何が安心してくださいですか!コーラとポップコーンって映画鑑賞じゃないんですよ!」
何、驚いた顔をしてるんだよ、
俺の黒歴史を娯楽扱いしてるの?
「コーラとポップコーンいりませんか?美味しいですよ?」
ふざけんな、俺の黒歴史を楽しむ気まんまんだよ。
……でも、この女神だけがポップコーンとコーラを食べているのを想像したらムカついてきた。いいよ、食べてやるよポップコーン。
「あーもう、いります、コーラとポップコーンください!味は……3種類全部で!」
「もーう、星くんは欲張りさんなんだから、じゃあ鑑賞会に行きますよ!」