焦げた空気が鼻を刺し、エンジョルノと対峙するルナは、彼の圧倒的な気配に圧されるような感覚を覚えた。
周囲には気絶した冒険者たちが横たわり、にゃん民たちのコメントが画面越しに飛び交っている。
「みにゃさん、とりあえずアナリティクスで相手のステータスを見てみますにゃ!」
ルナは敵を凝視し、アナリティクスを発動しようと試みる。
しかし、瞳に宿るはずの光が薄く揺らめいただけで、何の画面も表示されない。
「で、出ない……?アナリティクスが効かないですにゃ!」
にゃん民: マジかよ
にゃん民: 鑑定弾かれた!?
ルナが戸惑っていると、エンジョルノはローブを揺らしながら嘲笑するような口調で語りかける。
「何をしましたか?
レベル差がありすぎる相手には、鑑定など通用しませんよ。
私と貴方の間には、天と地ほどの差があるということだ。」
にゃん民: うわ、チート潰された感
にゃん民: レベル差で鑑定無効とか、RPG的にはヤバい相手だな
にゃん民: でもルナちゃん、同接1000超えの力で殴ればいけるかも?
「そうですにゃ……とりあえず、殴ってみますにゃ!」
ルナは拳を握りしめ、力を込めてエンジョルノに突進する。
ネコ発勁を繰り出し、にゃんこ百烈掌も視野に入れた一撃を放とうとするが――
「にゃっ!?」
彼女の攻撃は、ローブの内側で揺れる炎に阻まれ、届く前に弾かれる。
それどころか、近づいただけで炎の熱がルナの腕を焼き、じりっとした痛みが走る。
「痛っ……!?」
にゃん民: 攻撃できない!?
にゃん民: 炎バリアみたいな特殊スキルかよ
にゃん民: 同接1000でも相手にならないなんて!
「貴様ごときが私に触れると思いましたか?
魔族の中でも四天王と呼ばれる私が、普通の冒険者レベルで手に負えるはずがないでしょう。」
エンジョルノが楽しそうに笑う中、にゃん民たちは焦りをコメントにぶつける。
にゃん民: やばい、特殊スキル持ちには通じないってこと?
にゃん民: このままじゃルナちゃんマズい!
にゃん民: このチャンネルもおしまいか?
その時、ルナの視界にVTubeスタジオからの通知が現れた。
オレンジ色のアイコンが点滅し、まるで新しい選択肢を示すかのように輝いている。
「ん?通知が……出ましたにゃ?」
コメント欄も気づき、ざわつき始める。
ルナは困惑しながら、その通知に指先を伸ばす。
果たしてこの通知は彼女に逆転の手段を与えるのか。