ルナはVTubeスタジオの通知に指先を伸ばし、表示された新たなスキルを確認する。
「『Vスキル: BAN』……?これが新しく使えるようになりましたにゃ!」
コメント欄がさっそく反応する。
にゃん民: BAN!?
にゃん民: 敵をBANってこと?配信的なネタじゃんw
にゃん民: 相手ごと消せるとかチートすぎる!
「えっと、スキル説明を読んでみますにゃ……」
ルナはスキル詳細ウィンドウを開く。
そこには「BAN: 対象の敵が持つスキルを1つ封印する」と書かれていた。
「スキルを一つ封印できる……つまり、あいつ(エンジョルノ)の炎を封印すれば近づけるにゃ!」
コメント欄が一気に盛り上がる。
にゃん民: キタコレ!
にゃん民: 炎封じればルナちゃん殴れる!
にゃん民: バリア消せるとかヤバい!
しかし、ルナは少し言葉を濁した。
口を噤んでしまう彼女に、にゃん民が不安になり声をかける。
にゃん民: どうしたルナちゃん?
にゃん民: 何か問題あるの?
にゃん民: まさか、制約とか?
「そ、その……このBANスキル、一回の使用に……100万かかるみたいですにゃ。」
その言葉を聞いた瞬間、コメント欄の流れがピタリと止まったように感じられた。
一瞬の静寂が走る。
にゃん民: 100万……
にゃん民: マジかよ
にゃん民: 勘弁してくれwww
あまりにも高い代償に、ルナは困惑と落胆を隠せない。
しかし、次の瞬間、画面上部に金色に輝くメッセージが出現し、特別な通知音が鳴り響く。
「……えっ!?す、スペチャが来ましたにゃ!」
高額スペチャが投げ込まれ、コメントに富豪にゃん民らしき発言が表示される。
石油TheKing: ルナちゃんの命に比べれば安いものです。
どうか遠慮せず、BANスキルをお使いください。
その額面を見て、ルナは目を見開く。
「100万……!」
コメント欄が再び沸き立つ。
にゃん民: ナイスペ!ナイスペ!
にゃん民: さすが富豪にゃん民!
にゃん民: あんたのおかげでルナちゃんが助かる!
「せ、石油TheKingさん……ありがとうございますにゃ……!」
ルナは感激で声を震わせる。
「エンジョルノ……あなたはもう終わりですにゃ!
みんなが力を貸してくれたんです。
みんなの思い、いや、お金を無駄にはできませんにゃ!」
ルナは拳を握りしめ、視線をエンジョルノに向ける。
同接と視聴者の支援が形となったこの瞬間、彼女は覚悟を新たにする。