バズリディアを後にし、ルナは広い草原へ足を踏み出す。
遠くには山々が霞み、空には白い雲がふわりと浮かんでいる。
しかし、行き先であるエルフの里がどこにあるのか、地図もなければ道しるべも見当たらない。
「エルフの里って、どこにあるんですかにゃ……?」
ルナが立ち止まると、コメント欄がわらわらと意見を述べ始める。
にゃん民: 道わかってるの?
にゃん民: 遠そうだよなぁエルフの里って
にゃん民: さすがに徒歩はきついんじゃ?
「ふふーん、みにゃさん、ご心配には及びませんにゃ!」
ルナは自慢げに胸を張る。
彼女は新たなスキルがあることに気づいていた。
「実は、私、新たなVスキルを授かったんですにゃ!」
にゃん民: 新スキルキター!
にゃん民: 今度は何だ?
にゃん民: またBANみたいなやつか?
「いいえ、今回はもっと移動が楽になる系ですにゃ!
いきますにゃ、ユニコーーーーーーーン!!」
ルナが叫ぶと、空気が震え、眩い光が輪を描く。
光の中から現れたのは、真っ白な馬体に輝く一本角を持ったユニコーンだった。
「うわぁ……ユニコーンさん、初めましてですにゃ!」
驚きでコメント欄も騒然となる。
にゃん民: ユ、ユニコーンだと!?
にゃん民: マジかよ、ユニコーン召喚!
にゃん民: ガチ恋勢絶対安心宣言!?
にゃん民: これがVTuber界で守護される秘宝……!
「え、えっと、にゃん民さん、何を言ってるんですかにゃ?
私、よくわからないんですが……」
ルナは不思議そうな顔をするが、コメント欄はのざわつきは収まらない。
ユニコーンは鼻先でルナに顔を擦り付け、鳴き声を上げる。
「ユニコーンさんはエルフの里がどこにあるかご存知ですかにゃ?」
「ヒヒん!」
ユニコーンは肯定するように嘶いた。
ルナはスキル欄の説明で、ユニコーンは全ての道を知ると書いてあったのを読んだのだが、一応確かめてみたのだ。
「うふふ、いい子ですにゃ、ユニコーンさん!
これでエルフの里までひとっ走りですにゃ!」
ルナはユニコーンの背に乗り、嬉しそうに手綱を握る。
ユニコーンは軽く嘶くと、地面を蹴って柔らかな芝生を駆け出した。
「みにゃさん、一緒にエルフの里へ行きましょうにゃ!
新たな冒険、始まりますにゃ!」
にゃん民たちも「行けー!」「旅の再開!」「ユニコーンかわいい」と沸き立つ中、ルナは風を切って進んでいく。
こうして、新たなスキルを得たルナは、ユニコーンに乗ってエルフの里を目指し、異世界の旅路を再び進み始めたのだった。