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5-3 ホワイトタイガー

 ユニコーンの背に揺られながら、ルナは広がる草原を突き進んでいた。


 遠くには背の高い木々が増え、空気もひんやりと澄んでいく。

 やがて、前方の景色にぼんやりと大きな樹木の影が浮かび上がる。


「みにゃさん、あれがエルフの里の目印、世界樹でしょうかにゃ?」


コメント欄でも「エルフ=世界樹!」「もうすぐエルフの里だな」といった声が挙がる。

ルナは期待に胸を弾ませる。


 しばらく道なりに進むと、道端で騒がしい音が聞こえる。

 視線を向けると、灰色の獣たち――グレーターウルフの集団が、白毛の小さな虎状の生物を追い詰めていた。


「な、なにかいますにゃ……あれはホワイトタイガーの子供……!?」


 子供のホワイトタイガーは傷だらけで、息も絶え絶え。

 グレーターウルフたちは牙を剥き、狩りの締めくくりをしようとしている。


「みにゃさん、虎といえど同じネコ科、放っておけませんにゃ!」


 ルナはユニコーンから飛び降り、にゃんこ百烈掌を繰り出してグレーターウルフを威嚇する。

 同接で強化された彼女の力は圧倒的で、ウルフたちは空気圧で弾き飛ばされ、悲鳴を上げて森へと逃げていく。


「よかった、追い払えましたにゃ。

 君、大丈夫ですかにゃ?」


 ホワイトタイガーの子供は弱々しくうめき、体中に痛々しい傷が走っている。


「このままじゃ、死んでしまいますにゃ……」


 ルナはカバンから傷薬を取り出し、虎の口元へ流し込む。

 しかし、傷は深く、体も冷たくなっていくような気配がある。


「だ、だめにゃ……治らないですにゃ!

 どうにかならないでしょうか、みにゃさん……」


コメント欄も心配そうな声で埋まる。「かわいそう」「なんとかしてやれ」「ヒール魔法ないのか?」などの言葉が飛び交う。


「私ができることは……」


 その時、VTubeスタジオがまた点滅し、ウィンドウが光る。


「条件をクリアしました。新スキルを解放します」と画面に表示される。


「新スキル……?

 スキル名は……『マスコット化』?」


 にゃん民たちは首を傾げ、「マスコット化?」「なんだそれ?」「ペットにできる?」とコメントを投げかける。


 ルナは焦りつつも、残された手段がこれしかないと判断する。

 このスキルが、ホワイトタイガーの子供を救う鍵になるのだろうか。


「発動してみるにゃ……!」


 ルナは希望を胸に、マスコット化スキルのボタンに指を伸ばした。

 淡い光がホワイトタイガーの子供を包み込み、事態は新たな局面を迎えようとしていた。



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