ユニコーンの背に揺られながら、ルナは広がる草原を突き進んでいた。
遠くには背の高い木々が増え、空気もひんやりと澄んでいく。
やがて、前方の景色にぼんやりと大きな樹木の影が浮かび上がる。
「みにゃさん、あれがエルフの里の目印、世界樹でしょうかにゃ?」
コメント欄でも「エルフ=世界樹!」「もうすぐエルフの里だな」といった声が挙がる。
ルナは期待に胸を弾ませる。
しばらく道なりに進むと、道端で騒がしい音が聞こえる。
視線を向けると、灰色の獣たち――グレーターウルフの集団が、白毛の小さな虎状の生物を追い詰めていた。
「な、なにかいますにゃ……あれはホワイトタイガーの子供……!?」
子供のホワイトタイガーは傷だらけで、息も絶え絶え。
グレーターウルフたちは牙を剥き、狩りの締めくくりをしようとしている。
「みにゃさん、虎といえど同じネコ科、放っておけませんにゃ!」
ルナはユニコーンから飛び降り、にゃんこ百烈掌を繰り出してグレーターウルフを威嚇する。
同接で強化された彼女の力は圧倒的で、ウルフたちは空気圧で弾き飛ばされ、悲鳴を上げて森へと逃げていく。
「よかった、追い払えましたにゃ。
君、大丈夫ですかにゃ?」
ホワイトタイガーの子供は弱々しくうめき、体中に痛々しい傷が走っている。
「このままじゃ、死んでしまいますにゃ……」
ルナはカバンから傷薬を取り出し、虎の口元へ流し込む。
しかし、傷は深く、体も冷たくなっていくような気配がある。
「だ、だめにゃ……治らないですにゃ!
どうにかならないでしょうか、みにゃさん……」
コメント欄も心配そうな声で埋まる。「かわいそう」「なんとかしてやれ」「ヒール魔法ないのか?」などの言葉が飛び交う。
「私ができることは……」
その時、VTubeスタジオがまた点滅し、ウィンドウが光る。
「条件をクリアしました。新スキルを解放します」と画面に表示される。
「新スキル……?
スキル名は……『マスコット化』?」
にゃん民たちは首を傾げ、「マスコット化?」「なんだそれ?」「ペットにできる?」とコメントを投げかける。
ルナは焦りつつも、残された手段がこれしかないと判断する。
このスキルが、ホワイトタイガーの子供を救う鍵になるのだろうか。
「発動してみるにゃ……!」
ルナは希望を胸に、マスコット化スキルのボタンに指を伸ばした。
淡い光がホワイトタイガーの子供を包み込み、事態は新たな局面を迎えようとしていた。