ユニコーンの背で揺られながら、ルナは薄い緑光に満ちた森を進んでいた。
みけのすけはルナの肩にちょこんと乗り、風を感じるように耳を動かしている。
やがて、木々の隙間から、背の高い大樹がぼんやりと輪郭を見せ始める。
「みにゃさん、あれがエルフの里の目印でしょうかにゃ。あの大樹、きっと世界樹……!」
にゃん民: エルフ=世界樹!
にゃん民: 雰囲気あるなー
にゃん民: 近づいたらどうなるんだろ
近づくと、森の奥に木造の門があり、苔むした石畳が続いている。門は半開きで、中に明かりが見える。
「エルフって人間嫌いって聞いたことあるけど、大丈夫ですかにゃ……?」
にゃん民: 襲われたりしないかな
にゃん民: 気をつけてルナちゃん
にゃん民: 弓矢で狙われてるかも!
ルナがユニコーンから降りて門前で戸惑っていると、木製の扉が音もなく開き、中から一人の女性が現れた。
銀色の長い髪、透き通る肌、尖った耳——まさにエルフと呼ぶにふさわしい姿。
「お待ちしておりました、猫神ルナさん。」
「わ、私を知ってるんですかにゃ!?」
にゃん民: 知られてるwww
にゃん民: どういうことだ?
エルフの女性は静かに微笑み、一礼する。
「女神インフルエンシディア様の導きにより、あなたがお越しになることはわかっていました。
里長がお話したいことがございます。どうぞ、中へ。」
ルナは驚きつつも、歓迎されている様子にほっとする。
人間嫌いとされるエルフが、こうも丁寧に迎えてくれるとは。
門をくぐれば、木々の根や幹を巧みに利用した家々が並び、花や草で飾られた小道が光苔で優しく照らされている。
だが、よく見ると、包帯を巻いたエルフや治療を受けている者が多く、痛みを耐える小さな声があちこちで聞こえる。
「怪我をした方が多いですにゃ……」
にゃん民: 思ったより深刻そう
にゃん民: 何があったんだろう?
エルフの女性は表情を少し曇らせながら、「里長が事情をお話しします」とだけ告げ、ルナを大樹の根元へと導く。
そこには落ち着いた木造の家があり、中に入ると柔らかな灯りと木の香りが漂う。
静寂な空間で待っていると、杖をついた小柄なエルフの老人が現れた。
その眼差しには、重い事情を語らねばならぬ覚悟が宿っている。
「ようこそ、猫神ルナ殿。
あなたに聞いてほしいことがあるのです……」
ルナは息を整え、緊張に唾を飲み込む。
このエルフの里で何が起きたのか、そして彼らは何を望んでいるのか。