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5-5 エルフの里

 ユニコーンの背で揺られながら、ルナは薄い緑光に満ちた森を進んでいた。

 みけのすけはルナの肩にちょこんと乗り、風を感じるように耳を動かしている。


 やがて、木々の隙間から、背の高い大樹がぼんやりと輪郭を見せ始める。


「みにゃさん、あれがエルフの里の目印でしょうかにゃ。あの大樹、きっと世界樹……!」


にゃん民: エルフ=世界樹!

にゃん民: 雰囲気あるなー

にゃん民: 近づいたらどうなるんだろ


 近づくと、森の奥に木造の門があり、苔むした石畳が続いている。門は半開きで、中に明かりが見える。


「エルフって人間嫌いって聞いたことあるけど、大丈夫ですかにゃ……?」


にゃん民: 襲われたりしないかな

にゃん民: 気をつけてルナちゃん

にゃん民: 弓矢で狙われてるかも!


 ルナがユニコーンから降りて門前で戸惑っていると、木製の扉が音もなく開き、中から一人の女性が現れた。

 銀色の長い髪、透き通る肌、尖った耳——まさにエルフと呼ぶにふさわしい姿。


「お待ちしておりました、猫神ルナさん。」


「わ、私を知ってるんですかにゃ!?」


にゃん民: 知られてるwww

にゃん民: どういうことだ?


 エルフの女性は静かに微笑み、一礼する。


「女神インフルエンシディア様の導きにより、あなたがお越しになることはわかっていました。

 里長がお話したいことがございます。どうぞ、中へ。」


 ルナは驚きつつも、歓迎されている様子にほっとする。

 人間嫌いとされるエルフが、こうも丁寧に迎えてくれるとは。


 門をくぐれば、木々の根や幹を巧みに利用した家々が並び、花や草で飾られた小道が光苔で優しく照らされている。

 だが、よく見ると、包帯を巻いたエルフや治療を受けている者が多く、痛みを耐える小さな声があちこちで聞こえる。


「怪我をした方が多いですにゃ……」


にゃん民: 思ったより深刻そう

にゃん民: 何があったんだろう?


 エルフの女性は表情を少し曇らせながら、「里長が事情をお話しします」とだけ告げ、ルナを大樹の根元へと導く。


 そこには落ち着いた木造の家があり、中に入ると柔らかな灯りと木の香りが漂う。

 静寂な空間で待っていると、杖をついた小柄なエルフの老人が現れた。

 その眼差しには、重い事情を語らねばならぬ覚悟が宿っている。


「ようこそ、猫神ルナ殿。

 あなたに聞いてほしいことがあるのです……」


 ルナは息を整え、緊張に唾を飲み込む。

 このエルフの里で何が起きたのか、そして彼らは何を望んでいるのか。



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