「私の体なんて奪って、あんた何するつもりなのよ!」
シャムは声を震わせながら、目の前の木製ピエロ――マリシャスヘイターを睨みつける。
「そうですねえ。私のスキル“パペットストリング”は、どんな相手でも人形のように操れるんです。
あなたに爆弾を仕込んで……そう、インフルエンス教国のニニギさんでしたっけ? 彼女のもとへ保護を申し出に行けばどうでしょう?」
マリシャスヘイターは甲高い声で笑いながら、まるで地獄絵図を想像するかのような仕草を見せる。
「おやさしい彼女なら、数多くのVTuberを苦しめてきたあなたでも、きっと保護してくれるでしょう。
そして教会の奥深くまで潜入したら……カチッ、ドカーン!
VTuberは部位チューバーになっちゃいました、なんて。
ちょっとグロすぎますかね? ふふふ」
そのあまりに冷酷な計画に、シャムはドン引きして言葉を失う。
しかし、彼女はあることに気づき、口元にかすかな笑みを浮かべる。
「バカだね、あんた……これ配信されてるのよ?
視聴者が鳩行為して、ニニギってやつも気づいちゃうでしょうが。
はい、作戦しっぱーい。」
鳩行為とは、配信で起きたことを、他の配信に知らせる行為のこと。
一般的には悪質な行為とされ忌避されるが、今回ばかりは認められるだろう。
「ふふふ、冗談ですよ。そんなこと当然わかってますとも。
簡単に成功する計画なら、苦労はしません。
……私はあなたの、その“邪悪なエナジー”と“現実世界の知識”が欲しいんです。」
マリシャスヘイターは一歩、また一歩とシャムに近づき、まるで操り人形を弄ぶような手つきで糸を操る仕草を見せる。
「さあ、“鬱猫シャム”さん……体、いただきますね。
あなたが怯えて震える顔を見るの、興奮しますよ。」
「くっ……やめ、やめろっ……!」
後ずさるシャムだが、背後はすでに魔王軍の兵が固めている。
同接も下がり、力も落ち込んだ彼女には、ここを脱出する手立てなど残されていない。
「やばいよ!誰か助けてあげて!」
シャムファンのコメントは誰かに届くのだろうか……