広がる戦場は、VTuberたちと魔王軍のモンスターが乱舞する混戦そのものだった。
VSingerたちの歌声によるバフが行き渡り、視聴者の声援で強化されたVTuberたちは、ゴブリンやオーク、ウルフの大群を必死に押し返している。
一方、天照ニニギをはじめ、猫神ルナや鬱猫シャムら“魔王討伐チーム”は、戦場を他のVTuberに任せ、城の奥へと突き進んでいた。
彼女たちは高速移動ができる生物に騎乗し、敵の中枢を目指すストライクチームを形成している。
「ユニコーン、お願いですにゃ!」
ルナは白銀のユニコーンに跨り、しなやかに疾走する。
シャムは黒いバイコーンに、そしてニニギは三つの角を持つトライコーンに乗っていた。
「トライコーンって……つまりどういうことなのよ……」
シャムがボソッと呟くが、ニニギは表情を崩さないまま、先を急ぐ。
周囲には魔王軍の雑兵も散発的に現れるが、3体の幻獣が強引に駆け抜け、相手を蹴散らす。
ルナはふと、ニニギが先ほど魔王のことを「あいつ」と呼んでいたのを思い出し、疑問を口にする。
「さっき、魔王のことを“あいつ”って言ってましたにゃ。
知り合いなんですかにゃ?」
コメント欄もザワつく。
にゃん民: そうそう、俺も気になった
にゃん民: 魔王って人間なんだっけ?
にゃん民: 知り合いとか…何があったの?
ニニギは少し苦しげな表情を見せてから、短く息を吐いた。
「ええ、確信したわ。さっきの声で間違いない。
魔王は『フジワラ』――かつて私が“ネコノミコト”をともに作り上げた共同創業者よ。」