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11-6 フジワラ

 長い廊下を駆け抜け、猫神ルナ・鬱猫シャム・天照ニニギの三人は、魔王城の最深部とされる“謁見の間”へとたどり着いた。


 扉を押し開けると、そこには玉座が鎮座している――のだが。


 玉座に座っていたのは、スーツを着てメガネをかけた30代ほどの男性。

 忙しなくノートパソコンを操作している様子に、ルナは思わず首をかしげた。


「え……あれが、魔王なんですかにゃ? どう見てもサラリーマンさんですにゃ……」


 にゃん民: え?まじでリーマンじゃん

 にゃん民: リモートワーク中かな?


 男はちらりとルナたちを一瞥したが、すぐにノートパソコンへ視線を戻す。

 その動きに苛立ちを覚えたニニギが声を張り上げる。


「フジワラ! 来たわよ! 一体どういうことなの? ちゃんと説明しなさい!」


 “フジワラ”と呼ばれた男は、ようやくノートパソコンから顔を上げ、口の端をつり上げて微笑んだ。


「ああ、真琴さん。ようやくいらっしゃったんですね……お待ちしてましたよ」


 その一言に、コメント欄がざわつく。


にゃん民: 真琴って誰?

にゃん民: まさかニニギの中の人の名前?

にゃん民: いきなり個人情報晒してくるのは強烈だな


「やばそーなやつね……」


 シャムが息を潜めるように呟くが、ニニギは言い返す言葉も出ずに唇を噛んでいる。


「説明ねぇ、わかりました。

 あなたたちにも……いや、配信を見ている“お客さん”にも、ご説明差し上げましょうか」


 フジワラはノートパソコンをパタンと閉じ、立ち上がる。

 その姿はまるでビジネスマンと変わらないが、背後に漂う黒いオーラがただならぬ邪気を放っていた。





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