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11-7 栄光の日々

 かつてフジワラは、大手IT企業に勤めていた。世界的に配信事業が広がりはじめ、投げ銭による収益が莫大な可能性を秘めていると肌で感じていた時期だった。


 当時、マスク姿やアバターを用い、素顔を隠して活動していた“もけもけ動画”系の配信者たちを見て、フジワラは思案する。


もし洗練されたビジュアル要素を足せば、さらに多くの投げ銭が飛び交う“ビジネス”になるのではないか、と。


そして同じ会社に在籍していた真琴を誘い、VTuber配信業を手がけるスタートアップ「VStars」を立ち上げるに至った。


 しかし、事業はまったく甘くなかった。


魅力的なアバターを作るため有名絵師に依頼するも門前払いされ、ようやく引き受けてくれる絵師が見つかったと思えば、納品はいつまでも遅延。


苦労の末、ようやく理想的なアバターが完成しても、実際に配信を担う“中の人”の候補が逃げ出してしまった。


やむなく真琴を演者に据えて始めたのが、あの「ネコノミコト」である。


「本当に苦労しましたよ。

 社会性のない人間ばかりで、私が導いてあげなければ何もできないというのに……。」


 想像以上に苦労の連続だったが、“ネコノミコト”は奇跡的な成功を収めた。


テレビやラジオ、雑誌、ネット媒体で連日取り上げられ、海外リアルライブも大成功。


VStarsの業績は指数関数的に伸び、フジワラ自身もまた時代の寵児と呼ばれ、この世の春を謳歌した。


「最高の気分でした。私が全てを支配する。ファンもメディアも、流行さえも!

そう――そこの女が転生するまでは、ね……」





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