「――VTuberを滅ぼしたいか?」
その低く抑えられた声に対し、フジワラは迷わず頷き、低く答えた。
「もちろんです。あいつらを皆、地獄に落としてやりたい。」
すると次の瞬間、フジワラは光と闇が入り混じるような眩暈に襲われ、この異世界へと飛ばされていた。
邪神の導きにより、彼は魔王という立場を与えられ、魔族を従える力を得たのだ。
「――それ以来、転生経験のあるVTuberをこの世界へと呼び寄せ、彼らの醜い心をファンどもに晒してやったというわけですよ。」
フジワラがそう言い放つと、コメント欄も騒然となる。
にゃん民: な、なんだって…
にゃん民: 転生Vがあちこちに来てたのってコイツが呼んだのか?
にゃん民: 最悪すぎる…
にゃん民: モンスターに襲われてトラウマで寝込んでる子もいるって聞いたぞ!?
そんな中、ある疑問が浮かんだ人々が書き込んだ。
にゃん民: あれ、でもルナちゃんって転生してないよね?
にゃん民: そうだそうだ。事務所が爆散しかけたけど、IPを買い取っただけだし
にゃん民: 確かに〜!
ルナも、戸惑いながら小首を傾げる。
「そ、そうですにゃ。私はルナ一本ですにゃ。転生経験なんてないですよにゃ。」
フジワラは不満げな視線をルナに向け、頬を歪めて呟く。
「ふうん……それが不思議なんですよ。私は“あなた”を読んだ覚えがないのに、どうしてこの世界に来たのか……」
「にゃんですと?」
思わずルナが問い返したその時、シャムが割って入る。
「ねぇ、ちょっといい? 他にも転生経験のないVTuberが混ざってると思うんだけど。たとえば“木阿弥もとの”って子も、初めてVやったって言ってたよ?」
「な、何……?」
フジワラは一瞬動揺の色を見せ、額にうっすら汗を浮かべる。
コメント欄も冷ややかな反応で、あれこれ推測を始める。
にゃん民: まとめサイトとか見てテキトーに選んだだけじゃね?
にゃん民: 頭悪いな…フジワラって東大出身って噂あったが
にゃん民: 適当かよ
シャムはあからさまにあおるような口調で肩をすくめる。
「なんだ、意外と適当なのね。私たちのこと愚民とか言っといていい加減じゃん。」
「う、うるさいっ……! 転生していようがしていまいが、VTuberなど所詮は承認欲求の奴隷だ! どうせ都合が悪くなったらガワを捨てて、新しい体で転生するんでしょ!」
怒気を孕んだ声でフジワラが吐き捨てる。
だが、コメント欄はどこか呆れた空気になっている。
にゃん民: だいぶイっちゃってるな…
にゃん民: こりゃ話通じないわ
にゃん民: マジで面倒くさいタイプだな
にゃん民: 高学歴の無敵の人、始末におえねー
フジワラの目は血走り、怒りを燃やしながらも、どこか不穏な焦りを含んでいた。