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第7話 盗賊の襲撃


「いくぞテメェらァ!!  ここで勇者を仕留めりゃ、王公認の貴族様の仲間入りだッ!」

「「うぅおおおおお!!!」」


 突如、遠くから耳をつんざくような叫び声が響いた。


「大変です! 修道院に盗賊の連合部隊が責めてきました!」


 日が落ちた頃修道院の食堂で食事を楽しんでいた俺たちは、見張りをしていた元兵士の警戒報告を聞いて戦慄した。


「盗賊だと! 戦力が削られたから、新しい捨て駒を送りつけたのか!」


 俺は即座に立ち上がり、元兵士達を引き連れて防衛の準備をする。いくらなんでも早すぎないか?

 まだ、司祭達が用意してくれた食事を食べ終えてないのに!!

 俺達が修道院の外へ出て武器を構えると、赤黒い旗を掲げた百名以上の男たちが、喚きながら火を掲げて迫ってくる。


「何故、彼らが修道院を?」

「あの王に雇われたんだろうな。俺達が女神様のブローチ奪還を阻止する時間稼ぎの為に」


フォルティナの疑問に、俺は冷静に答えると、彼女は眉間にシワを寄せて女神様の魔導書を構える。彼女の鋭い目は、盗賊のトップにナイフを向けるように睨みつける。……まずい事になりそうだなと直感し、嫌な汗が背中を這った。


「そ、そんなの許しません! みなさん下がって下さい! 何人たりともこの修道院を傷付けさせません!」

「待て! さっきの戦闘でフォルティナも疲れてるだろ?ここは俺と元兵士達で何とかする! その間は司祭達を避難させてくれ」


「で、ですが」

「頼む、司祭様の命を守ってくれ」

「は、はい!」


 血相を変えた俺は、彼女に命令して敵陣に突っ込む。その様子をみた元兵士達は戸惑いながらも、目の前の盗賊へ反撃する。


「お前ら!絶対に修道院にかすり傷をつけずに防衛しろ!最悪、盗賊の退治出来なくてもブリードが凍らせてやる!」

「な、無茶な!」

「無茶でもやるんだよ!」


 自分でも無茶苦茶な命令を元兵士たちに下すが、それでも威圧的に命令するしかない!

 俺は再びフリードを呼び出し氷の壁を作らせ、元兵士達にフリードの護衛を任せる。


「そこをどけ!」

「おっと! リーダーに手出しする前に俺らを倒すんだな!」

「お前たちは大人しく首を差し出せば良いんだよ! そうすれば王が俺たちを貴族にしてくれるんだからなぁ!」


 俺は剣を抜いて盗賊のトップの元へ突っ込むが、手下達が防御魔法で妨害する。


「この程度の練度で!」

「うわぁ!」


 だが、防御魔法ごと叩き切った。

 幸い奴らの練度は低く、魔法も我流の中級クラスの魔法しか使ってこない。その間、盗賊のリーダーらしき男は隙を突いて修道院の中へと侵入する。


「くそ! 倒しても守りきれねぇ!」


 盗賊のリーダーを追いかけるも、他の雑兵が修道院の事なんてお構い無しに火力の高い炎や岩を操る攻撃魔法を放ち、乱戦状態になった。今のままだと、フリードが作ってくれた氷の壁が破壊される!


 まずい! フォルティナや司祭たちが危ない!!


「どけぇええ!!」


 それでも、俺は内部へ侵入した奴を追いかける。

 だが、状況は深刻だった。裏手から侵入したのか、修道院の内部に何人か盗賊が侵入していて土足で祭壇を踏みにじっていた。


「どこだ!? フォルティナはどこにいる!?」

「見つけたら、生け捕りにしてベルヘイルズ王へ持ってこい!」

「これ以上好きにさせるか!!」


「げ……! 勇者ヴィクトールだと!隙を突いて逃げる……うぐぅ」


 俺が飛びかかると、こちらに気付き武器を構える。だが、何か様子がおかしい。ま、まさか!フォルティナの魔法か!?


「な、何が……起きてる!」

「ぐ、ぐるじぃ……」


 俺が何もしてないのに、盗賊達が苦しみ始めて武器を落とす。俺は嫌な予感がして、すぐ目の前にいる盗賊たちから後ずさる。


「ヴィクトール……き、貴様……な……にお」

「……遅かったか」

「遅かった? 勇者……何の魔法だ」

「俺の魔法じゃねぇよ」


 突如、盗賊達の周りに魔法陣が出現し、無数の光沢に光る白い触手が伸び始め奴らの身体に突き刺さる。


「うぐぅ……」

「うごうぉご!!」


 ビリ……!! バチン……!!


 奴らは必死に抵抗するも、魔法特有の白い雷のような光が魔法陣の中から発生する。

 まるで、人形のように白目を剥いてピクリと動かなくなって次々と倒れていく。


「ヴィクトール、すみません! 遅くなりました! 司祭様を地下倉庫へ避難させました」


 元気よく出てきたのは、目をらんらんと輝かせたフォルティナだった。口元は笑っているが、目は据わっている。



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