特務部隊の仕事は、もっぱら有事に備えて待機することだそうで、ひとまず同僚たちにならって部屋でくつろがせてもらった。
だが、パイプ椅子に腰を落ち着けた僅か数分後、頭上のスピーカーから大音量の警報が鳴り響いた。次いで、ジジ——というノイズの後、館内放送が入った。
「特務部隊A班へ通達! 待機中の隊員はすぐさま現場へ急行せよッ!」
A班、というのは僕たちのこと……だよな?
合っているかと同僚二人へ目配せすると、神辺がコクリと頷いた。
「どうやら、早速仕事が入ったみたいですね!」
なぜ、そんなに嬉しそうなのか。
程なくして、部屋の外がドタバタと騒がしくなったかと思うと、待機室のドアがバーンと開け放たれ、むくつけき軍服の男たちが続々と乗り込んできた。
市街地戦仕様の戦闘服と防弾ベストを着込み、ヘルメット他各種装備を引っ提げ、手元には油断なく小銃を携えている。彼らの胸元には、日の丸を背景に
集団の先頭に立つ一番偉そうなオジサンが猛々しく叫ぶ。
「ゴミども、今すぐ準備しろ! 待ちに待った仕事の時間だァ!」
別に待っちゃいないが、逆らう権利もなさそうだ。僕たちA班は彼らの指示に従って立ち上がり、背中に小銃を突き付けられながら東京支部の廊下を駆け足で進んだ。
そうして辿り着いたのは車庫だった。
そこで、僕たちは例のゴツい車——装甲車の後部に押し込められた。
(遂に『仕事』かあ……)
不安で胸のうちがざわざわする。
心を落ち着ける間もなく、装甲車は全員が乗り込むとすぐに慌ただしく発進する。
装甲車には十名ほどの軍人も同乗しており、装甲車は迂闊に身じろぎもできないほどのすし詰め状態だ。
走行中、軍人の一人が僕たちA班のもとへやってきて、僕たちの耳元にワイヤレスイヤホンのような機器を取り付け始めた。
A班の三人全員が付け終わると、その機器から聞き覚えのある声が流れてくる。
〈こちら竜胆。聞こえるか?〉
神辺が「はぁい」と妙に高い声で返事をする。どうやら、この機器はマイク付きの双方向通信機らしい。僕と戈賀も、神辺に続いて返事をした。
〈今回のターゲットは一名。『
怒りを引き金にして目覚める異能は、怒りのボルテージが上がるにつれてその出力を増してゆく。だが、その性質は決して喜ばしいばかりではない。
神は、人類に祝福と呪いを同時に授けた。
異能の祝福——〝
異形の呪い——〝
神辺の左腕や、恐らく戈賀の異様に鋭い犬歯も
とはいえ、
利害得失、表裏一体——。
無知蒙昧な我々が手前勝手に利する異能を