リュドヴィックさん達と出会ってから、ちょうど一週間が経った。
ここまで来ると、自分の身体にもだいぶ慣れて思い通りに動けるようになった。
鍛錬も順調に進んで、私は元が運動好きなのもあって、どんどん腕を上げていた。
「よし……!」
「はい!」
二日程前から、私はリュドヴィックさんとの対人戦での鍛錬を受けている。最初こそすぐにへばっていたものの、なんとか攻撃を当てたり、避けたりできるまでにはなった。
「イグナート。だいぶマシになったな? これなら、ルクバトまではなんとかなるだろう」
スパルタなリュドヴィック先生からお赦しが出た!
よかった……これでもう……。
「ルクバトに着いたら、本格的に双剣の鍛錬だ」
ですよね……。
「はい……」
「何か不満でも? まぁいい。それより、ここを出立する。……ベルと合流するぞ?」
ちょっとだけ嫌そうな顔をしてリュドヴィックさんはそういうと、鍛錬用の木剣を返却して先に行く。私も同じく返却すると、慌てて後を追った。
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「リュド兄! イグナートさん!」
支部を出て、ベルちゃんが一週間お世話になっていた宿屋に着くなり、私達の姿を見つけて駆け寄って来てくれた。
リュドヴィックさんの顔が、明らかに変わったのを私は見逃さなかった。二人が義理の兄妹って知ってから見ると、リュドヴィックさんって結構シスコンに思える。
「イグナートさんも、本当に騎士になったんですね! 似合ってますよ!」
呑気な事を考えていた私に、無邪気な優しい言葉が刺さる。お義兄さんの事、シスコンとか思ってごめんなさい。
「ありがとう、ベルちゃん。頑張るよ」
そう言って笑顔を向けると、ベルちゃんも微笑み返してくれた。可愛い。そして、リュドヴィックさんの視線が痛い。
「コホン。さっさと行くぞ。ベル、準備は出来ているな?」
「うん、リュド兄!」
ベルちゃんは得意げに、荷物をまとめたらしい体格にはちょっと不釣り合いなリュックを、背負ったまま私達に見せてくれる。可愛い。あ、ごめんなさい。視線で殺そうとしないで……リュドヴィックお義兄様。
「偉いな、ベル。よし、行くぞ」
こうして、私達は一週間滞在したポーリスの町を出て、ルクバトへ向かう馬車に乗り込んだ。
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「そういえば、この一週間、ベルちゃんはなにをしていたの……ですか?」
タメ口で話しかけたら、リュドヴィックお義兄様から『馴れ馴れしくするな』という視線がグサグサと刺さってきた。
がちでシスコンじゃん……。いや、イケメンだからいい……わけないじゃん?
「えーっとね、ワタシは教会の神官様のお手伝いをしてました! イグナートさんは鍛錬されてたんですよね?」
「へぇ~、神官様の! 私も、おかげさまでだいぶマシになったんだ……コホン、なりましたデス」
リュドヴィックお義兄様からの熱い殺意ある視線を受けつつ、私とベルちゃんは一週間分の話をしながら、馬車に揺られる。
その揺れは穏やかで、眠気を誘うものだった。
話がひと段落してしまい、私は……うっかり眠ってしまった。