町の中も、想像以上の美しさだった。黒レンガがアクセントになっていて、それでいて暗くなどなくむしろ、神秘的な印象すら与えてくる。
そんな中を歩いていると、行き交う人々が私達に視線を向けているのを感じた。
不思議に思っていると、隣を歩くリュドヴィックさんが小声で教えてくれた。
「お前……目立つんだよ。エルフかつ双剣装備で……こういうのもアレだが、容姿も悪くないからな」
イケメンから褒められると、かなり照れますが……?
まぁ、確かに『イケメンエルフ』でキャラメイクしたけどね……。
「いや〜照れますね! はは……」
一度意識し出すと、視線が妙に気になってくる。
そして……やたらと恥ずかしくなってきた。イケメン設定にしすぎた? あ、やば、ちょっと後悔してきたな。
そんな私の思いなどつゆ知らず、リュドヴィックさんが話を続ける。
「まぁ、目立つということは、それだけ行動も見られるということだからな? くれぐれも騎士団に恥をかかせるなよ?」
今のは完全に刺されたなー!
「はい。気をつけます!」
私はそう答えるしかなかった。だって、圧が凄いんだもん……。
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「ここが、ルクバト聖騎士団本部ですか……!」
広い。とても、大きくて広い!
ポーリス支部で見た垂れ幕があるけれど、その大きさは倍だし、旗も立っていて、そしてなにより建物が支部の倍くらいある。
高さも五階建てくらいだろうか? それくらい高くて、威厳すら感じる。
私が圧倒されていると、リュドヴィックさんが横から肩を叩いてきた。
「まぁ、気持ちはわからんでもないが……。その内慣れる。さ、入るぞ?」
促されるままに、私達は中に入って行った。
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中は広くて円形状で、壁際に黒レンガで出来た螺旋階段が最上階まで繋がっているようだった。
一階の中央にある受付らしき場所の方へリュドヴィックさんが向かって行った。
私も向かおうとしたけど、リュドヴィックさんから手で『待っていろ』と合図されたため、邪魔にならなそうな所で大人しく待つことにした。
しばらくして、リュドヴィックさんが私の元へ戻ってくる。
「団長が居られるのは最上階だ。階段だが、行けるよな?」
語感に圧を感じる。これは、訊いているようで訊いてないですよね……? 行くぞって言ってますよね?
だいぶリュドヴィックさんのことがわかってきた……気がする。
私は大人しく従い、階段を登り始めた。キツくて長い階段にめまいが起きそうになりながら――