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第19話 オクタヴィアンとの出会い

 部屋を退出してすぐ……待機していたらしい、水色の短く切りそろえられた髪に、水色の瞳をした童顔のイケメンと目が合った。


「おっ、出てきたな! 俺は『オクタヴィアン・クレヴリー』! 今日、お前を案内してやれって言われてんだ! よろしくな!」


 明るく元気な声に、私も先程までの緊張が解けて少しだけ笑顔になる。


「はじめまして! 私は……」


「イグナート・アウストラリスだろ? 知ってるぜ! お前、もう有名人だからな!」


 え? そうなの!?


 戸惑う私に、人懐っこい笑顔でオクタヴィアン君が言う。


「そうビビるなって! あ、俺のことは『オクト』って呼んでくれよな?」


「あ、うん! よろしくね、オクタヴィ……オクト君!」


 そう言って、私とオクト君は握手を交わした。

 あ、なんだろう。この感じ……いいなぁ。それに、オクト君はなんか、可愛い系イケメン? 子犬系って言葉が似合いそうな感じだ。

 呑気な思考を巡らせていると、オクト君が不思議そうに尋ねて来た。


「ん? どうしたんだ?」


「あ、いや……こういうの慣れていない……気がしてさ! だから嬉しくて!」


「そっか……お前、記憶喪失なんだもんな。ま、その内思い出せるって! 気楽に行こうぜ? イグナート!」


 励ましは嬉しいけど、記憶喪失じゃないんだよな……。

 罪悪感を感じながら、私はオクト君に改めて本部内を案内してもらうことにした。


 ****


「んで、ここが食堂な?」


 最上階から順に一部屋づつ案内してもらい、最後に一階の右側にある食堂までやって来た。


「うわぁ〜……広くて豪華!」


 黒レンガ造りなのは変わらないのに、街並みや上階とは違う綺麗さとシャンデリアや調度品の数々に、思わず目を奪われる。


「な、すげぇだろ? ここは癒し重視だから、より豪華なわけ!」


 癒し……かどうかはわからないけど、豪華だけれど確かに落ち着く空間だった。


「うん、凄いね……!」


 私の返事に満足したのか、オクト君がこう提案をしてきてくれた。


「せっかくだし、なんか食ってこうぜ?」


 オクト君が食堂入口からすぐ近くのカウンターに向かっていく。私も後を追い、見よう見まねでトレーを取ったところで気づく。


 ……私、お金持ってなくない?


「あの、オクト君! 私、お金が……」


 そう素直に告げると。オクト君が笑顔で答えた。


「ああ、だろうな! だから、ここは俺の奢りな?」


「えっ……いいの、かい?」


「おう! 任せとけ!」


 こうして私は、オクト君に奢ってもらうことになったのだった。

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