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第20話 お前ってさ……

 オクト君の奢りで、私は野菜とお肉がゴロゴロ入ったシチューと丸いパンが二個に、山盛りのサラダを盛ってもらった。


 正直、こんな量を奢ってもらって悪いな……なんて思いながら、私達は中央左の丸テーブルの席に座った。


「そんじゃ、『唯一神、サジタリウス様へ恵みの感謝を』! いっただきまーす!」


「『唯一神、サジタリウス様へ恵みの感謝を』。頂きます」


 私達はお祈りを捧げて食事を摂った。さすがと言うべきか、とても美味しかった。なんだろう? 口に馴染む味? そんな感じだった。


 ****


「ふぅ〜、食った食った!」


 オクト君がお腹をさすりながら言うので、私は思わず笑ってしまう。すると、オクト君が少し言いにくそうにしながら口を開いた。


「なぁ、お前ってさ……」


「え、えと? なに、かな……?」


 ニヤリと笑うと、オクト君が爽やかに残酷な事実を告げて来た。


「なんか、仕草とかが女みてぇだよな! 案外、女だらけのとこで育ったりとかかもな〜!!」


 私の中で鐘が鳴り響く。そりゃあ元『女』ですけど! 改めて言われるとショックがデカいな……。


「そ、そんなに女っぽいかな……?」


「ん? 気にすんなって! 何かの手がかりかもってくらいに思っとけよ!」


 それ、フォローになってないから……!


 オクト君の指摘に、私は心底落ち込んだと同時にあることを思い出した。

 ……そもそも私は某歌劇団の男役や王子様に憧れて、このイグナートを作らなかった?


「ねぇ、オクト君」


「ん?」


 はじまりを思い出した私は、決意した。


「私、男らしくなりたい! だから、特訓に付き合って……くれないか!?」


「はい?」


 そりゃそうだろう。いきなり男らしくなんて言われても意味不明かもしれない。けど、今の私には必要なことだと思ったのだ。


 その決意を感じたのか、オクト君は困惑しながらも答えてくれた。


「俺も男らしさって何かはわかんねぇけど……いいぜ! 女々しいって思ったところ、教えてやるよ!」


「ありがとう!」


 快く承諾してくれて、私は思わず笑顔になる。


「あ~……まぁ、俺もどこまで出来るかわかんねーからな?」


「うん……いや、そう……だな!」


 ちょっと無理矢理感があったけど、頑張って男らしさを意識して返事をしてみた。


 あ、オクト君が苦笑いしてる? ダメだった?


「まぁ、ボチボチだな! んじゃ、男らしくなるためってのも変だけど、広場に行こうぜ!」


 ……そうなりますよね。っていうかやっぱり微妙だったんだ……。

 かくして、私の『男修行』が始まるのだった。

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