オクト君の奢りで、私は野菜とお肉がゴロゴロ入ったシチューと丸いパンが二個に、山盛りのサラダを盛ってもらった。
正直、こんな量を奢ってもらって悪いな……なんて思いながら、私達は中央左の丸テーブルの席に座った。
「そんじゃ、『唯一神、サジタリウス様へ恵みの感謝を』! いっただきまーす!」
「『唯一神、サジタリウス様へ恵みの感謝を』。頂きます」
私達はお祈りを捧げて食事を摂った。さすがと言うべきか、とても美味しかった。なんだろう? 口に馴染む味? そんな感じだった。
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「ふぅ〜、食った食った!」
オクト君がお腹をさすりながら言うので、私は思わず笑ってしまう。すると、オクト君が少し言いにくそうにしながら口を開いた。
「なぁ、お前ってさ……」
「え、えと? なに、かな……?」
ニヤリと笑うと、オクト君が爽やかに残酷な事実を告げて来た。
「なんか、仕草とかが女みてぇだよな! 案外、女だらけのとこで育ったりとかかもな〜!!」
私の中で鐘が鳴り響く。そりゃあ元『女』ですけど! 改めて言われるとショックがデカいな……。
「そ、そんなに女っぽいかな……?」
「ん? 気にすんなって! 何かの手がかりかもってくらいに思っとけよ!」
それ、フォローになってないから……!
オクト君の指摘に、私は心底落ち込んだと同時にあることを思い出した。
……そもそも私は某歌劇団の男役や王子様に憧れて、このイグナートを作らなかった?
「ねぇ、オクト君」
「ん?」
はじまりを思い出した私は、決意した。
「私、男らしくなりたい! だから、特訓に付き合って……くれないか!?」
「はい?」
そりゃそうだろう。いきなり男らしくなんて言われても意味不明かもしれない。けど、今の私には必要なことだと思ったのだ。
その決意を感じたのか、オクト君は困惑しながらも答えてくれた。
「俺も男らしさって何かはわかんねぇけど……いいぜ! 女々しいって思ったところ、教えてやるよ!」
「ありがとう!」
快く承諾してくれて、私は思わず笑顔になる。
「あ~……まぁ、俺もどこまで出来るかわかんねーからな?」
「うん……いや、そう……だな!」
ちょっと無理矢理感があったけど、頑張って男らしさを意識して返事をしてみた。
あ、オクト君が苦笑いしてる? ダメだった?
「まぁ、ボチボチだな! んじゃ、男らしくなるためってのも変だけど、広場に行こうぜ!」
……そうなりますよね。っていうかやっぱり微妙だったんだ……。
かくして、私の『男修行』が始まるのだった。