「よっしゃ! まずはその、ナヨッと感をなんとかしようぜ!」
ちょっとした広場に出ると、オクト君がそう告げる。こじんまりしているけれど、緑が多くて風が気持ちいいけども! オクト君の明るい声で指摘されると、なんだろう……ものすごくダメージがデカいな……。
「よ、よろしく!」
「おう! 任せとけ! 一発目はそうだな……。仕草だ!」
仕草……いきなりハードル高くない?
でも! やると決めたからには、やるしかないよ……ね?
「んじゃ、俺の動作をマネてみな!」
「うん……じゃなくて、おう?」
「そこはまぁ、いいんじゃねぇかな……?」
こうして私は、オクト君の仕草をひたすらマネするという時間を過ごした。
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「イグナート、ここにいたか。……何をしているんだ……?」
私が『仕草』と格闘すること数時間。どうやら探しに来てくれたらしい、リュドヴィックさんが現れた。この場面見られた〜! 恥ずかしい! 自分で言い出したことだけど!!
「あ、リュドヴィック卿! お疲れ様です!」
リュドヴィックさんに気づいたオクト君が、挨拶をする。
「ああ、確かオクタヴィアン卿だったな? イグナートの世話を任せてすまなかったな」
リュドヴィックさん、私は幼子みたいってことですか……?
「いえいえ! 楽しいですし!」
オクト君も否定しないのね……じゃなくて、しないのな?
「そうか、ならいいが……。イグナート、これからお前が住む寮に案内するから着いてこい。……オクタヴィアン卿も来るか? 他人事ではないからな」
えっ? それってどういうこと?
完全に置いて行かれている私に、オクト君が笑顔で言う。
「俺達、同室なんだよ!」
「え? は、はい!?」
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本部からすぐ近く……というか敷地内に寮はあった。
そこも黒レンガ造りなのは変わらないけど、本部が円形ならここは四角い。そして、四つのブロックに東西南北で分かれているようだった。
その中の南側のブロックに、私達は向かっていく。
中に入ると、リュドヴィックさんが入口の右隣にある受付? みたいなところに行く。
『前世の私』は寮生活をしたことがないのです……なので表現の仕方がわからないのです……。
中から男の人の声がしてきた。耳触りの良い穏やかな声だ。
「おや、リュドヴィック卿ではありませんか。本日は、どうされました?」
「ああ、イグナート・アウストラリスの件できた。おい、イグナート、こっちにこい」
呼ばれて行くと、そこには尖った耳に、銀髪のセミロングと青い瞳が印象的な優しそうなエルフの男性がいた――