「ああ、彼がそうなのですね? ふふふ。ボクと同じエルフなんて、親近感が湧きますね。あ、ボクは『ランベール・デュゲ』と申します。ここの寮父をやっています。よろしくお願いしますね?」
アルベリク団長とはまた違った声色だ。なんだろう? なんか、不思議というか……?
「イグナート・アウストラリスです。よろしくお願いします!」
私は挨拶をする。自分で言うのもなんだけど、結構様になってきた気がするけど、どうなのかな?
ランベールさんは微笑むと話を続けてくれた。
「ええ、よろしくお願いしますね。オクタヴィアン卿と同室ですので……鍵は彼にお渡しします」
指名されたオクト君が近寄り、ランベールさんから鍵を受け取る。
「それじゃ……えっと、リュドヴィック卿はどうされます?」
「オレはあくまで教育係だからな。居場所が分かればいいから、部屋の案内は任せる」
それだけ告げると、リュドヴィックさんは私の方を向く。その瞳には、圧は感じられて思わず身構えた。
「そういう訳だから、イグナート。オレは下で待っている。……案内が終わったら、鍛錬だからな?」
やっぱり、そうですよね……。
「わ、わかりました……!」
「話はついたみたいですかね? んじゃ、俺達の部屋に行こうぜ、イグナート!」
右端にある階段へと案内された。リュドヴィックさんは受付? と階段の間にある、ソファが置かれたスペースに移動していた。
横目でリュドヴィックさんを見ながら、私はオクト君と一緒に階段を上がって行った。
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「俺達の部屋は四階の……402号室な?」
「ってことは、階段から近い感じ?」
「おう! 大正解! ってことで、着いたぜ?」
あっという間に部屋に辿り着く。鉄製っぽい扉には、部屋番号が書かれていた。
あれ? 今更だけど……私、この世界の文字読めてる? 読めているよね?
違和感なく読んでいた。文字を読めることが普通過ぎて気づかなかったけど……転生したこととなにか関係あるのかな?
「ん? どうした?」
急に黙った私の方へ視線を向けて、オクト君が不思議そうな顔をする。
「いや、なんでもないよ。それより、中に入……らないか?」
うん。
無理しているのは充分理解してる。だけど、ここで引くわけにはいかない!
理想に近づくためにも!
「そっか! ようこそ、部屋へ〜なんてな?」
そう言って扉を開けてもらい、中に入った。
広さは約十畳程で、左端に木製の二段ベッドがあり、真ん中に丸テーブルと椅子が二つ、そして右端に机を挟んで棚が置かれていた。
「トイレは入口隣の扉な? んで、湯浴み場は一階で……まぁ、そこは後で案内するとして……中、どうよ?」
「うん。……じゃなくて、ああ、広くて過ごしやすそう……だな!」
「お前結構気にすんのな? 仕草直しゃあ、言葉使いなんてなんとかなるって!」
オクト君のフォローが痛い。……そんなに女々しいの? 嫌でも気になるんだけど……。
「おっと、俺はベッド上使ってっけど、お前はどうするよ?」
落ち込んでる場合じゃなかった。っていうか……私、これからオクト君と生活するって、どうして行けばいいんだろう? 『前世の私』はそういうのと無縁だったから、正直困るんだけど?
困惑と戸惑いを隠しつつ、私は返事をした。
「あ~……私は下でいいよ。その方がありがたいかな?」
「そっか! じゃ、そーゆうことで……早くリュドヴィック卿のとこ戻るか!」
「あんまり待たせたら悪いしね……」
部屋を出て私達は一階に降り、再びリュドヴィックさんと合流した。教育係って、大変だよね? なんか、申し訳ないな……。
そんな想いを抱きつつ、私はリュドヴィックさんの方へ視線を向けるのだった。