この乙女ゲーム。
メインヒーローのアルベールを始めとして、他にヒーローが四人いる。
一人目は、騎士であるアドルフ・ブラック 二十六歳。王国騎士団に所属しており、アルベール付きの騎士である。
常にアルベールの側に控え、うちの公爵家にも何度も出入りしている。
冷静沈着で容姿端麗。そして剣の腕前は超一流と、文句のつけようがない好青年だ。
リゼットとは街中のカフェで出会う予定だ。
二人目は、リゼットの幼馴染であるユーグ・クーザン 二十一歳。
ユーグの父親がムニエ伯爵家の執事をしており、その関係で同じ歳であるリゼットとは幼い頃から親しい仲である。
幼馴染として接してくるリゼットに対して、ユーグはいつからか恋心を抱くようになったようだ。
三人目は、隣国の王子であるパトリス・フランソワ 二十四歳。
ここラブリエ王国の隣の国、クレル王国の第二王子であり、アルベールの友人である。
何でもスマートにこなすアルベールを羨ましく思い、自分もアルベールのような王子になりたいと常に努力を欠かさない生真面目な王子だ。貴族たちが参加する乗馬の大会がラブリエ王国で開かれた際に、リゼットと初めて出会う。
四人目は、リゼットの義理の兄であるシャルル・ムニエ 二十五歳。
リゼットは幼い時に母親と死別しており、後妻としてムニエ伯爵と結婚したのがシャルルの母親である。シャルルは母親の連れ子としてムニエ伯爵家にやってきた。
血のつながりのない二人だが、周りから見ると本当の兄弟のように仲が良い。
ただ、シャルルはリゼットに対して敵意を持つものに容赦がないところがあり、クリスティーナのことも毛嫌いしている。
それは、兄弟愛を超えたものにさえ感じる。
「この四人がリゼットに恋するヒーローたちなんだよね。うふふ。イケメンばかり……じゃなくて、ちゃんと計画を立てないと!」
闇雲に街を探索するだけでは何も得られない。ポイントを決めて行動しよう。
私は、四人がリゼットに出会う場所の下調べをしようと考えた。
「まず、騎士のアドルフから。アドルフは街中のカフェでリゼットと出会うのよね」
『カフェ パティスリー』
ラブリエ王国で若い女の子に一番人気のカフェ。おしゃれなスイーツを目当てに来るカップルも多い。(私のゲーム知識より)
そんな女の子に人気のカフェになぜか迷い込み、途方に暮れていたアドルフに声を掛けたのがリゼットだった。
初めは、自分には場違いだとカフェから出ようとしたアドルフに、リゼットはおすすめのスイーツを教える。
勧められるままスイーツを口にするアドルフだったが、その美味しさとリゼットの優しさに徐々に心を開いていく。
すっかり打ち解けた二人は、またこのカフェで会おうと約束した。
そして、次の約束の時に事件は起きた。
クリスティーナの登場である。
アルベールのことでリゼットに不満を持っていたクリスティーナは、馬車で街を移動中にリゼットがカフェにいるのを見つける。
すかさず店内に入ったクリスティーナは、リゼットに恥をかかせようとわざとふらついたフリをしてテーブルにあったコーヒーが入っているカップを倒し、リゼットのドレスにこぼしたのだった。
「思い出すだけで嫌な気分になる話だな〜。でもそこにアドルフが現れてリゼットを助けるんだよね。素敵〜! よし、まずは『カフェ パティスリー』に行ってみよう」
私は、目的地が決まりうきうきと外出の支度を始めることにした。