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極道という生き方-1



一水会本部は混乱に満ちていた。

結成して数か月で半分以上の組織が解散もしくは本家への敗北宣言をしてしまった。

いらだつ会長の山崎は集まった幹部に怒鳴り上げる。

「いったいどうなっているんだ!!」

行き場のない怒りが宙を舞う。


集まった幹部たちもいつもの顔ぶれがいない状況に戸惑っている。

「だいたい…副会長が猫に殺されただと!?

この世界は見栄とメンツが命だ。

加藤は一水会の看板に泥塗って死によった。

どうするんだ!?

おい中村?中村はどうした!?」

加藤に対する悪態をついた後、最高顧問の中村の姿が見えないことに気づく。

「中村のオジキは今日の昼に組の解散を警察に届けて引退されました…。」

末端幹部が恐る恐る言う。

怒りで硬直する山崎。

ヤクザの世界は引退宣言したらカタギとなり、渡世の者は手出しができなくなるのが任侠道である。

「会津から絶縁状が届いた。もう退路はないぞ。

最後まで戦うもんはこの中にどんだけおるんじゃ?」

山崎がきつい口調で問う。

静まる幹部たち。

その中で声を発する人間がいる。

「会長。」

山崎組若頭の木下保一きのしたやすかずである。

「なんだヤス。」

厳しい表情で木下に聞く。

「どうもこの抗争を煽っている奴が特定できそうで。」

木下がふてぶてしい態度で言う。

「どいつが裏でこの絵を書いてんだ?」

山崎の問いに、

「まあ、とりあえずこの件は俺に任せてもらえませんか?

あぶりだしてバラバラに刻んでやりますよ。」

自信に満ちた木下の表情に、

「よし、ヤスにそいつの件は任せる。

とにかくお前ら押し戻せ。まだ一水会は負けちゃおらん。」

山崎の言葉に集まった幹部の顔が引きつっていた。




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