回収していったゴミはどこに集められるのか。探して春香に渡せば春香は気が済むだろうか。たぶん、市街地に回収車が向かったから、ゴミ袋を返してもらうために市街地を目指した。力が抜けそうになっていたが歩き出す。誰も……誰も助けてはくれない。
もう日も暮れ、あてもなく私は回収車を探して市街地へ入った。
風呂に入っていない体、洗っていない体操服は血まみれで、市街地の通行人は海を割るように私を避けた。
歩き疲れて、駅に伸びる階段の一番下に座り込んだ。疲れた。お腹もすいた。
春香に引きずり回されたから、髪もぼさぼさだった。寒いし眠い。うとうとしていたら、肩を叩かれた。
上を向くと制服の警察官がいた。
どうしたの、こんなところで、お母さんは? お父さんは?
私は警察に連れていかれたら春香が殴りに来る、と思いこの場をどう逃れようかと必死で考える。言葉が出てこなくて、ただ首を振る。
おうちはどこ? 電話番号はわかる? と聞かれたので、とっさに暗記していたエチカちゃんの家の電話番号を口にしていた。
名前を聞かれたが、先ほどの春香の状態を思い出して言えない。
ひとまずは病院に連れて行かれた。切れた額を処置してもらう。そして、横にいた看護師さんに唇だけ動かして、た・す・け・て、と何度か合図を送ってみたが、困ったように微笑んで看護師さんは、大丈夫だからねー、と答えるだけだった。
警察署には、意外にもエチカちゃんのお父さんが来た。私を見て、はっきりと言った。
うちを巻き込むな、と。
そのあとどうなったか、私はよく覚えていない。