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第5話 砂の下


 私は次の日、私立図書館に行って「コレラ」っていう病気について調べた。


 「コレラ♪コレラ♪……あ、これだ!」


 1冊の本を取った。


 でも本にはむずかしい言葉がたくさん書いてあって、正直よくわからなかった。


 「おなかをこわす病気……米のとぎ汁みたいな下痢?なんか、こわくない気がする……かも?」


 この時の私は、書いてあることをちゃんと理解できず、すぐに飽きて図書館を出た。


 帰り道、えりなちゃんに会った。


 「えりなちゃんだ!どうしたの?」

 「鈴ちゃん!お母さんから頼まれたお使いの途中だよ。鈴ちゃんは?」

 「んーとね、コレラ?について調べたくて図書館に行ってたの」


 えりなちゃんは不思議そうに首をかしげる。


 「コレラってなに?」

 「なんか、お腹が痛くなる病気みたい。よくわかんなかったけど」

 「すごいね、難しいこと調べてるんだね?」

 「私、頭いいから!」


 えっへんとえりなちゃんに胸を張った。


 「えりなちゃん、お使い終わったらいつもの公園で遊ぼうよ!」

 「いいよ。でも何して遊ぶの?」

 「砂掘り!」


 私は笑顔で答えた。


 えりなちゃんのお使いが終わって、私たちは公園へ。


 「ねぇ鈴ちゃん、どうして砂掘りなの?」

 「ふっふっふ、それはね、この地面にはね、人の骨が埋まってるらしいんだよ!」


 今思うと、なんであんなに楽しそうに砂を掘ろうとしたのか、わからない。

 子どもの手で骨なんか掘れるわけがなかった。 でもこの時、えりなちゃんが止めてくれて、本当に良かった。


 「え、やだよ……それよりブランコで遊ぼ?」

 「えー!宝探しだよ?えりなちゃん」

 「骨は宝じゃないよ……砂掘りするなら帰っちゃうよ?」

 「……わかったよ!ブランコやろ」


 えりなちゃんの言葉に、私はあわててブランコに向かった。


 10分くらい遊んでいると、えりなちゃんが急にトイレへ走っていった。戻ってきたので声をかけた。


 「えりなちゃん、大丈夫……?」

 「うん、大丈夫。最近お腹が痛くなるんだ。病気かな?」


 不安そうなえりなちゃんに、私は明るく答えた。


 「そんなことないよ!門音もお腹痛いことあったけど、病院で“しょうかふりょう?”って言われただけだったから、それだよ!」

 「そっか、そうだよね?」

 「今日はお家に帰る?」


 私は心配になって、そう聞いた。


 「ううん、鈴ちゃんのお話聞いたらお腹痛くなくなったよ!次はボール遊びしよ?」


 良かった、えりなちゃんが笑顔になって、私は少しほっとして、ふたりでボール遊びを始めた。


 「鈴ちゃん、暗くなったからそろそろ帰ろ?」

 「うん、お腹も空いたし。また明日ね、えりなちゃん!」


 そう言って公園をあとにした。




 アパートへ向かう途中、ふと公園を振り返ると



 誰も乗っていないブランコが、ゆらゆらと揺れていた。


 「風かな……まぁ、いいっか!」


 私は特に気にせず、214号室に帰った。

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