私は次の日、私立図書館に行って「コレラ」っていう病気について調べた。
「コレラ♪コレラ♪……あ、これだ!」
1冊の本を取った。
でも本にはむずかしい言葉がたくさん書いてあって、正直よくわからなかった。
「おなかをこわす病気……米のとぎ汁みたいな下痢?なんか、こわくない気がする……かも?」
この時の私は、書いてあることをちゃんと理解できず、すぐに飽きて図書館を出た。
帰り道、えりなちゃんに会った。
「えりなちゃんだ!どうしたの?」
「鈴ちゃん!お母さんから頼まれたお使いの途中だよ。鈴ちゃんは?」
「んーとね、コレラ?について調べたくて図書館に行ってたの」
えりなちゃんは不思議そうに首をかしげる。
「コレラってなに?」
「なんか、お腹が痛くなる病気みたい。よくわかんなかったけど」
「すごいね、難しいこと調べてるんだね?」
「私、頭いいから!」
えっへんとえりなちゃんに胸を張った。
「えりなちゃん、お使い終わったらいつもの公園で遊ぼうよ!」
「いいよ。でも何して遊ぶの?」
「砂掘り!」
私は笑顔で答えた。
えりなちゃんのお使いが終わって、私たちは公園へ。
「ねぇ鈴ちゃん、どうして砂掘りなの?」
「ふっふっふ、それはね、この地面にはね、人の骨が埋まってるらしいんだよ!」
今思うと、なんであんなに楽しそうに砂を掘ろうとしたのか、わからない。
子どもの手で骨なんか掘れるわけがなかった。 でもこの時、えりなちゃんが止めてくれて、本当に良かった。
「え、やだよ……それよりブランコで遊ぼ?」
「えー!宝探しだよ?えりなちゃん」
「骨は宝じゃないよ……砂掘りするなら帰っちゃうよ?」
「……わかったよ!ブランコやろ」
えりなちゃんの言葉に、私はあわててブランコに向かった。
10分くらい遊んでいると、えりなちゃんが急にトイレへ走っていった。戻ってきたので声をかけた。
「えりなちゃん、大丈夫……?」
「うん、大丈夫。最近お腹が痛くなるんだ。病気かな?」
不安そうなえりなちゃんに、私は明るく答えた。
「そんなことないよ!門音もお腹痛いことあったけど、病院で“しょうかふりょう?”って言われただけだったから、それだよ!」
「そっか、そうだよね?」
「今日はお家に帰る?」
私は心配になって、そう聞いた。
「ううん、鈴ちゃんのお話聞いたらお腹痛くなくなったよ!次はボール遊びしよ?」
良かった、えりなちゃんが笑顔になって、私は少しほっとして、ふたりでボール遊びを始めた。
「鈴ちゃん、暗くなったからそろそろ帰ろ?」
「うん、お腹も空いたし。また明日ね、えりなちゃん!」
そう言って公園をあとにした。
アパートへ向かう途中、ふと公園を振り返ると
誰も乗っていないブランコが、ゆらゆらと揺れていた。
「風かな……まぁ、いいっか!」
私は特に気にせず、214号室に帰った。