一ヶ月後、公爵家に合格通知が届く。
そこには「首席合格」と書かれ、新入生代表に指名するとあった。「手を抜いたはずなのに…」
ミラの父や母は「さすが、我が娘」と大喜び。
「大々的に入学祝いのパーティーを開催する」
と言い始めた。
さらにいずれミラの婚約者となる婚約者候補の三人の王子まで招いてしまった。
「冗談じゃありませんわ!王子殿下が三人もいらっしゃるの?厄介なことになりそうですわ」
「婚約なんて早すぎるのに、初めて会う相手と婚約を決められてしまったら、この転生人生、楽しめなくなってしまう」
とミラは思った。
バカ王子という噂をよく聞く。
童話の王子と違い。
現実の王子は甘やかされて育ったバカばかりと聞く。
「婚約者候補?勘弁して、婚約者なんてまだ早いわ。会ったこともない人が婚約者なんて…ないわ…、まじない」
しかし、王子相手では塩対応とはいかない。
不用意な発言で婚約を了承したなどといいがかりをつけられてはかなわない。
慎重かつ愛想笑いしつつ適当にあしらわなければならない。
そんなミラの思いにもかかわらず、パーティー当日がやってくる。
パーティーは、アルスランド公爵邸のホールで行われる。
アルスランド公爵は王族に連なる親戚筋であり、その中でも最も有力な家門で屋敷もまた王宮に引けを取らないものである。
パーティーには、やはり王族に連なる公爵家の面々や、有力貴族の侯爵家の人々が多数招待されていた。
そして、いずれミラの婚約者となるであろう三人の王子たちが招待されていた。
彼らは、会場でミラの姿を見かけるまで特に興味を示していなかった。
第一王子アルフォルスは、自分にふさわしい女性など早々いるわけないとうぬぼれ。
第二王子ハロルドは、こんなところに来るくらいなら自分の芸術の創作活動をしていたいと考えている。
第三王子のアレスターは女などにかまける暇があるなら剣を振るっていたほうがマシだと思っていた。
しかし、父である国王が
「ミラのハートを射止めた者を次期国王とする」
と言ったため、三人とも渋々このパーティーに足を運んだのであった。
しかし、ミラの姿を見た三人は、あっという間に彼女の虜となっていた。
パーティーでは、三人の王子たちはミラに対して熱心にアプローチしてくる。
第一王子アルフォルスは知的な雰囲気でミラに近づき、教養や学問の話題で会話を試みる。
第二王子ハロルドは、芸術や音楽の話題でミラの興味を引こうとし、自身の趣味や才能をアピールする。
第三王子アレスターは、力強いイメージをアピールし、ミラを守ることを強調。
しかし、ミラにしてみれば、第1王子は、底の浅い薄っぺらい知ったかぶりの知識をひけらかしてるようにしか思えない。
第2王子は、たしかに芸術に対しての知識はあるが、専門用語を永遠と聞かされうんざりしてしまう。
第3王子に至っては論外の筋肉バカ。
好感を持てる要素はまるでなかった。
ミラは彼らのアプローチに上手く対応し、笑顔で応じながらも、内心では彼らの取り巻きを面倒だと感じていた。
そんな中、第一王子アルフォルスがミラをダンスに誘った。
王子は上品な振る舞いでミラの手を取り、優雅な舞曲が始まった。ミラは王子とのダンスに少し戸惑いながらも、華麗に踊りながら内心でうんざりしていた。かんに障る気障な言動とナルシストな性格に閉口してしまう。
「あなたならばこの知的な私に相応しい」
「あの難関と言われる貴族学院に首席合格したあなたなら、私とともにあっても見劣りすることはないでしょう」
その類いの言葉をダンス中ずっと囁いてくる。ミラは、
「うざいんだよ。お前となんかとともにありたくないんだよ!」
と叫びたくなる気持ちを抑え、終始にこやかな表情をたたえて乗り切る。
アルフォルスとのダンスを終えたミラをハロルドがダンスに誘う。ハロルドは、ダンスの最中ずっと芸術の知識をひけらかす。
「私は印象派に特に深い感銘を受けていて…」
こいつもまたうざい。
「あなたを見ていると創作心が刺激される。あなたをモデルに絵を描き、あなたに捧げる曲を作りたい」
「芸術的才能が多方面にお有りになるのですね」
そんな言葉で適当にあしらう。
そしてアレスターとのダンスは、力強く情熱的と言うより相手のことを考えない体力で相手を振り回すような酷いダンスである。ミラだからこそついてこれるが、普通の令嬢にはこんなダンスについていけるわけがない。一人よがりの体力バカだ。さすがのミラも途中で
「殿下は、とてもダンスがお上手で殿下のダンスに技量についていくのは、大変でございますわ」
「いやいや、あなた、私のダンスに見事に合わせている。素晴らしい」
「相手に合わせることを覚えろ!この体力バカ!」と叫びたいのをこらえる。
パーティーの賑やかな雰囲気の中、王子たちはミラの歓心を得るべく、大胆な提案をする。
第一王子アルフォルスは、上品な笑みを浮かべながら、ミラに向かって話し始めた。「ミラ嬢、私も貴族学院に入学し、一緒に学びを深めることはいかがでしょうか。貴族としての義務を果たしつつ、新しい知識を得ることができれば、きっと楽しい時間を過ごせるでしょう」
第二王子ハロルドも続いて言葉を続けた。「独学で芸術を極めるのもいいが、見聞を広めるため貴族学院で学ぶのもいいかもしれません。私も学院に入学しましょう」
最後に第三王子アレスターが加わり、「私もまた、騎士としての技能を磨くため、貴族学院での修行を志します。おそらく、この様な機会はめったにございません。どうか、私たちとともに学びの道を歩んでいただけませんか」
貴族学院は基本的に下位貴族の子弟が通う場所で、公爵令嬢のミラの入学だけでも異例なのに、王族が通うなんて前代未聞である。
「入学試験は、もう終わってますわよ」
と遠回しに拒絶したが、
「我々は王子だ。不可能などない」
と返され、ミラは内心
「権力を振り回すんかい!このバカ王子ども!」
内心でぼやいた。
数日後、貴族学院が王子たちの入学を認めてしまった。
学院も王子達の権力の前に規則を曲げてしまったようだ。
ミラは学院生活が前途多難になりそうだと悩んだが、一つのアイディアを思いつく。
父に頼んで
「新入生代表は王子たちの方がふさわしいので私は辞退します。代表は王子たちをご指名ください」と提案してもらうことにした。
自分は一般生徒として学院生活を楽しもうと考えたのだ。
王子たちは名誉ある代表の座を二つ返ず事で引き受ける。
王子たちは注目を一身に浴びる。ミラの思惑通りとも知ら
。