ミラには入学前に確かめたいことがあった。
自分の能力を正確に知ることである。
知らずしてうっかり全力で振る舞ったりして大騒ぎになることの無いようにするためだ。
ミラは自分の中のゼクスに話しかける。
「あなたの能力について教えて」ミラの呼びかけに応え、ゼクスが説明を始める。
「身長40mからウイルスサイズまで自由に変えられる。あらゆる物質を透視できる透視能力。どんな小さな音でも聞き取れる聴音能力。巨体を支えられる怪力から繰り出されるパンチやキック力はいかなる強固な物質も破砕できる。
さらに音速で飛行もできる。
そして強力な破壊力があるゼクシウム光線を腕から発射できる」
「どんな化け物よ!あっ!ごめん。」
「構わない。私の能力は君達、人間の尺度で測れるものではないから」
ミラは驚愕しながらも試してみることにした。
ペンダントを取り出し変身を念じる。
ペンダントは本来のスティック状のアイテムに変わる。
変身ボタンを押すと光に包まれ、彼女の生前の記憶にある魔法少女の変身のような過程へと銀色の超人が姿を現す。
運動能力の恐ろしいまでの凄さを改めて体感
「なんて能力なの!」
強力無比のゼクシウム光線を放つと、一瞬で蒸発して周囲の地形が変わってしまった。
「これは何!」
「これがゼクシウム光線だ。一応、念の為出力を50%に抑えて撃った」
「…なんなの!これ?抑えた?これで?こんなもん、どこで何に対して使うの?!」
戦慄すら感じるミラ。
「怪獣とか!落下してくる巨大小惑星とか、激突コースを飛んでくる彗星とか、かな?」
「そんなもん、ボロボロ出現したりしないと思う」
ゼクスの力は天変地異でもない限り封印した方がよさそうだ。
人の姿に戻ったミラは今度は自身の生身の力を試してみることにした。
彼女は走ったり飛んだりしてみて、その驚異的な身体能力を実感した。
「私も、大概化け物ね。これって前世なら世界記録を凌駕していそうだ。」
「私って人間やめてる?」
「人間の女性のスペックとはこんなにも高いものであったのか?」
ひとしきりに感心するゼクスであった。
「違う。違う。わたし、こんなじゃなかったはずなのに?」
慌てふためくミラ。
「ゼクス、これは、女神様くれた能力のせいで、私は、本来普通の女の子なのに~」
「女神様のばか!限度ってものを考えてください!」
ため息をつくミラ。
そして、最大火力と思われる爆裂魔法を使ってみると、地形が再度変わってしまった。
「なにこれ?」
ミラは驚愕した。
ゼクスの声が聞こえてきた。
「その魔法も封印すべきだ。試みに問うが、何に対してその魔法を使う?」
「ドラゴンとか、ゴーレムかな?」
ミラが答えると、ゼクスは少し驚いた様子で尋ねた。
「この世界には、そんなものがごろごろしてるのか?」
「ごろ、ごろはしてないわね」
ミラは思い直した。
そして、空に向かって叫んだ。「女神さまのばかーっ!」