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第52話 間をとってクラス委員長

その日の放課後、貴族学院のAクラスでは入学から2週間を迎え、教室は少しずつ打ち解け始めていた。教師が教壇に立ち、ゆっくりと話し始める。「さて、皆さん、お互いのことが少しずつわかってきた頃かと思います。今日はクラス委員長を決めましょう。」


貴族学院では実力主義が徹底され、成績順でクラスが編成される。このAクラスには、入試で1位から20位までの生徒が集まっており、新入生代表のアリシアもいる。通常なら、彼女がクラス委員長として推薦されるのが自然な流れだが、アリシアは男爵令嬢であり、同じクラスには2人の公爵令嬢、ヒルデガルドとクラリスがいることから、クラス内の支持はこの二人に集中していた。


「委員長は、ヒルデガルド様がふさわしいと思います!」 「いや、クラリス様が適任でしょう!」


クラスはヒルデガルド派とクラリス派に分かれて意見がぶつかり、ざわつき始める。教師はそれを制して提案する。「公平に、投票で決めましょう」


すると、ヒルデガルドが席を立ち、「皆様、推薦いただきありがとうございます。しかし、ここでクラリス様の支持もあるならば、私はクラリス様のほうが適任だと考えます。よって、私は辞退し、クラリス様を推薦いたします」と、控えめながらも気高く言い切った。


その言葉を受けて、クラリスも立ち上がり、「私はヒルデガルド様を推薦いたします」と宣言。こうして堂々巡りが生じ、再びクラスはざわつく。


その時、小柄なアリアが手を挙げて立ち上がった。「今、クラスはヒルデガルド様派とクラリス様派に分かれている。このままどちらかを委員長に選ぶとしこりが残り、学院生活に支障が出るかも。そこで私は、間を取ってアリシア様を推薦する。アリシア様は新入生代表を務めましたから、資格は十分だと思う」


「間を取るってどういうこと?」とクラスメイトたちは一瞬戸惑ったが、アリアの提案には納得する者も増えてきた。教師も少し考えた後、「では、アリシア嬢をクラス委員長に推薦する提案に賛成の方は手を挙げてください」と進めようとした。


その時、ヒルデガルドが立ち上がり、「皆様、先程、私はクラリス様を推薦いたしましたが、撤回します。アリア様のご提案は見事であり、クラス全体のことを考えてのご発言には深く感銘を受けました。アリア様こそ委員長にふさわしいと思います」と宣言。


続いてクラリスも立ち上がり、「私もアリア様を推薦いたします」と微笑んで言う。


そして最後にはアリシアまで立ち上がり、「私もアリア様を推薦します」と口にした。


アリアは戸惑い、「なぜ私?私は子爵令嬢で、このクラスで一番年下、推薦したのはアリシア様だったはず…」と困惑していたが、クラリスがにっこりと微笑んで言った。「アリア様、ご自身でおっしゃったでしょう?間を取って」


「そう、アリア様が『間』ですわ」とヒルデガルドも笑顔で賛同する。


「間…?私が間…?」アリアは完全に混乱してしまったが、周囲のクラスメイトたちは笑顔でアリアを見つめ、温かな視線に少しだけ気持ちが和らいだ。


教師が締めくくりに、「皆さん、アリアさんは年少ですから、ぜひ皆さんで支え合っていきましょう」と言い残して教室を出ていった。


するとヒルデガルドが微笑み、「アリア様、私のことはヒルダと呼んでくださいね」


「これから仲良くしましょうね」とクラリスも微笑む。


アリアは少し照れながらも、「よろしくお願いします、ヒルダ様、クラリス様」と答え、こうして新たな友人たちを得て、思いがけずクラス委員長としての学院生活をスタートさせることになった。



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