●ミラの誘拐
辺境伯フォルスト侯爵の豪華なパーティーを 終えた帰り道、ミラは馬車の中で優雅な余韻 に浸っていた。侯爵との会話やダンスが心に 残り、彼女は穏やかな気持ちで外を眺めてい た。しかし、その平和な時間は突然の襲撃に よって打ち砕かれた。
突然の襲撃
「止まれ!」 外から響く怒声に馬車が急停止し、ミラは驚 きと不安を感じた。「何事ですか?」と車夫 に声をかけようとした瞬間、馬車の扉が激し く開け放たれた。覆面をした複数の男たちが 馬車を取り囲み、無理やりミラを引きずり出 した。
「何のご用でしょう?」 ミラは冷静に問いかけたが、男たちは答え ず、手早く薬物を使って彼女を眠らせた。視 界がぼやけ、意識が遠のいていく中、ミラは 心の中で思った。
『え?私を誘拐? やばい、なんか楽しい。誘 拐されちゃおう』
完全に意識を失う前、ミラはさらに考える。
『私を誘拐するなんて、頭の悪い奴らだな。 まぁ、しばらく、すきにさせるか…』
+
目覚めた先で
気がつくと、ミラは暗い部屋の中に横たわっ ていた。手足はしっかりと縛られ、口には猿 ぐつわがされている。彼女は状況を確認しつ つ、冷静に考えを巡らせた。
『さて、どんな相手かしら?』
部屋の扉が開き、一人の男が現れた。彼は冷 たく笑いながら名乗った。
「目覚めましたか、ミラ様。私はフェレス、 真祖教の祭司です。」
「んー、んがっ」と猿ぐつわ越しにわざと苦 しむような声を出すミラ。フェレスはその仕
草を嘲笑しながら猿ぐつわを外した。
「何か言いたいことでも?」
ミラは一瞬ため息をつき、相手に乗せられる ふりをして冷静に答える。
「私を誘拐して、何を企んでいるの?」
真祖教の計画
「あなたを生贄に捧げることで、我が神を復 活させ、真祖教の力をさらに強化するので す」とフェレスは誇らしげに語った。
ミラは一瞬驚愕した表情を作り、震える声で 聞き返す。「わ、私を生贄に...? そんな、な ぜ私が選ばれたのですか?」
フェレスは勝ち誇ったように答えた。「君の 存在は、この国の未来を左右する重要な鍵 だ。我が教団はその力を利用する。そして君 を失った王国は混乱に陥るのだ。」
ミラは内心で呆れつつも、表情には絶望を浮 かべてみせた。
『なるほど、国を混乱させる目的もあるの ね。バカな奴』
ベータスティックの行方
「そういえば...」 ミラはわざと不安そうに叫んだ。「私のペン ダント! どこへやったの?」
フェレスは薄笑いを浮かべて答えた。「あれ か。マジックアイテムだろう? 興味深い品だ が、我々がしっかり管理している。」
『やっぱり持ってるのね』
ミラは心の中で安堵しつつも、あえて震える 声を出してみせる。「それは私の大事なもの なの! どうか返してください!」
「返す? 笑わせるな。我々の神を復活させる ためには、そのアイテムの秘密も明かしても らう必要がある。」
「そんな...!」 ミラは涙を浮かべるふりを し、さらにフェレスを油断させる。「お願 い、命だけは助けて!」
フェレスは満足げに笑いながら答えた。「君 の命は我々の神のために捧げられる。その瞬 間を楽しみにしていろ。」
脱出の計画
フェレスが部屋を去った後、ミラは深呼吸を して頭の中で計画を練り始めた。
『さて、どうやってこいつらを打ち負かして やろうかしら。ベータスティックが戻らなく ても、この程度の連中なら余裕ね』
彼女は手首を動かし、縛られた縄の強度を確 認する。さらに部屋の中を見渡し、使えそう なものがないかを探し始めた。
『あの間抜け祭司、全部ペラペラ話してくれ たから情報は十分。さて、こっちの番よ』
ミラは不敵な笑みを浮かべながら、静かに行 動を開始する準備を整えた。彼女の誘拐劇 は、ただの始まりに過ぎなかった。
『さあ、どれだけ私を楽しませてくれるのか しら?』
彼女の瞳には、反撃の炎が燃え始めていた。