聖女ミラが誘拐されたという衝撃的なニュースは、瞬く間に王都中に広がり、大混乱を引き起こした。
王国中がパニックに陥り、騎士団や警察が総動員され、彼女の行方を追う大規模な捜索が開始された。王宮内では混乱がさらに広がり、国王自らが指揮を執る事態にまで発展する。
「ミラが誘拐された!?なんということだ……!」
国王は驚愕し、すぐさま対策会議を召集した。彼の前には、騎士団の指揮官や諜報機関の長が集まり、緊張感が漂う中、次々と意見が交わされた。
「皆、冷静に。ミラを無事に救出するため、全力を尽くさねばならん!」
国王の力強い言葉に、一同は気を引き締め、決意を新たにした。
一方、学院では、ミラの親友たちが彼女の安否を案じていた。
ヒルデガルト、クラリス、セシリア、アリシア、キャナル、そしてアリアの6人は学院に集まり、情報を共有しながら誘拐犯の手掛かりを探そうとしていた。
「ミラ様が誘拐されるなんて、信じられない……。」
涙を浮かべるアリシアに対し、クラリスが冷静に言った。
「泣いている場合じゃないわ。ミラを救い出すために、私たちもできることを探しましょう。まずは、誘拐犯の情報を集めるのが最優先よ。」
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その頃、真祖教の教会では、フェレスが信者たちに計画の成功を宣言していた。
「すべては計画通りだ。ミラを生贄に捧げることで、我々の力はさらに強大になる。そして、まずはしろがね教を徹底的に潰す!」
フェレスの言葉に信者たちは歓声を上げ、計画の成就を確信していた。
真祖教の暴走は止まらず、しろがね教の信者たちは迫害され、街中で身を隠して安全を求めるようになった。さらにその暴挙は一般市民にまで及び、無差別に攻撃を始めたため、王都全体が危機的な状況に陥った。
騎士団は鎮圧に奔走していたが、その混乱は収まる気配を見せなかった。
ガレスもまた、鎮圧に奔走しながら、心の中で不安を抱えていた。
「アイリーンが巻き込まれていないといいのだが……。」
任務を遂行しながらも、彼女の無事を祈らずにはいられなかった。
辺境伯フォルスト侯爵もまた、王都の治安維持に協力すべく自ら兵を率いて動き出した。
「この状況を見過ごせば、あの方に軽蔑されるに違いない。」
侯爵は部下たちに指示を飛ばし、治安維持に尽力した。
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王都が混乱の渦中にある一方で、アルスランド公爵邸は至って平和だった。
公爵夫妻は王都の混乱を知りつつも、冷静に事態を見守っていた。
「まったく、ミラが誘拐されたぐらいで国中が大騒ぎとは……。自分が誘拐されたらどうなるか、少しは想像できそうなものだが。」
公爵はため息をつきながらつぶやいた。
「帰ったら少し説教が必要だな。」
「まあ、あの子のことですから、夕食前には帰ってくるでしょう。」
公爵夫人が微笑みながら答えると、メイドのエルザが苦笑いしながら口を開いた。
「旦那様、奥様、ミラ様ですよ!何か面白い状況になったら、しばらく帰りませんよ。きっと。」
「そうか、困った聖女だな。」
公爵は苦笑しながら椅子にもたれかかった。
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ミラを巡る大騒ぎは日に日に激しさを増していった。王国全体が彼女の救出に向けて動き出し、騎士団、諜報機関、そして民間人までもが協力して真祖教の陰謀に立ち向かおうとしていた。
果たしてミラは無事に救出されるのか?真祖教の計画を打ち破り、王都に平穏を取り戻すことはできるのか?
すべての者が祈りを胸に、ミラの救出に向けて行動を開始した――ただし、アルスランド家を除いては、のんびりとした空気の中でそれを眺めていた。