こうして眞城くんの作った朝食を頂くと、不思議なことに、少し元気が出ているようだった。
「食は大事だからね」と言う眞城くんは、こういう対応にも慣れているように見えた。……慣れざるを得なかった、というべきなのかもしれないけれど。
そうして暫くすると、眞城くんは「さ、行くから準備して」と僕に言う。
「準備……なんの?」
「何言ってんの。魔物討伐に決まってるでしょ」
「え……えぇ?」
思わず素っ頓狂な声が出る僕を見る眞城くんも、逆に驚いているようにも見える。
「えぇ……って……伊月くん、昨日天皇家にお仕えするって」
「いや、でも僕は昨日のうちに備後に帰る予定で……」
「そんなの関係ないよ。今君がいるのがこのエリアなんだから。天皇家の命が出てしまった時にここにいた以上、伊月くんも集合だよ」
「そ、そういうもんなん?」
「そう。……そっか。伊月くん、
僕は目をぱちくりさせながら頷く。
……侍従。つまり天皇家に仕える僕らのような人間のことを言う。
「そう。じゃあ覚えておいた方がいいよ。どこか遠出したりしたときも、その地域で招集がかかった時は行かないといけないから」
「……わかった」
「だから僕も備後に行ってた時魔物を退治しただけだったんだよ。朝霞くんには怒られちゃったけど」
……。そういえば、そうだった。そういう理由だったのだ。
一応それぞれ担当エリアはあるものの、その場にいるときに招集がかかればいかなければいけないという理由で、眞城くんはあの時魔物を退治したのだ。つまり眞城くんは何も悪いことはしていない、ということになる。
……今度、朝霞くんに教えておいてあげよう。
時々、人の話、聞いてないから。
いや、僕も知らんかったってことは、僕も聴き逃した??
はてなマークを沢山浮かべている僕に見かねたのか、眞城くんは「昨日、」と教えてくれる。
「元服の儀で刀の拝受した時に、パンフレットみたいなのも一緒に貰ったでしょ」
「……あ!」
「それに大体書いてある」
「そぉなんじゃ」
昨日は刀に夢中になるばかりでパンフレットまではまだ目を通していないことに気づいた僕は、朝霞くんに人の事言えないなぁと思ったりする。
眞城くん、ありがとうな……
僕は、眞城くんがいるだけで随分と心強く、頼もしくも思うのだった。
◇
そうして僕らは任務の身支度を整える。
昨日ずぶぬれになってしまったシャツとスラックスは、きちんと洗って干したあと、一晩で乾いたらしい。それらを着用し、僕は昨日拝受したばかりの太刀を佩く。これだけで、随分と背筋が伸びる思いである。
「じゃあ、行くよ」
「うん」
こうして僕は眞城くんと共に……気持ちを切り替え、初任務の為に院の御所へと赴くのであった。