僕は眞城くんと共に、天皇家の
元服の儀の後、偽弁慶と戦い、眞城くんと決闘をし、和解して……そのまま眞城くんの家に泊まっては体調を崩した眞城くんを看病し、その夜鮮烈な前世の夢を見るという、こうして羅列するだけでも相当やまもりである。
昨日来たときは緊張と迷子であまり御所内をゆっくり眺める余裕もなかったけれど、こうして落ち着いて見渡すと、この御所内だけが外の空間から切り離されたかのように、平安時代の趣が感じられる。
寝殿造りの奥ゆかしい屋敷、広い日本庭園。これらが隅々までが丁寧に手入れされ、目に入るものすべてが新鮮のようでもある。
……特にしゃべってはいけないという規定はないのだろうけれど、無駄な会話ですらこの神聖な空間を損ねてしまうような気がして、僕は押し黙ったまま眞城くんの後をついていく。
……
天皇家。その筆頭となるのは天皇様のはずではあるが、実権を握っているのは法皇様であり、この世界でもずっと院政体制が敷かれている。この辺りは、完全に平安時代を彷彿とさせるような政治体制ともいえる。
この世界は……どこか平安時代と似ているのかもしれない。
……僕が考え事をしていると、目的の場所にたどり着く。
「失礼いたします」
そう言いながら、眞城くんが目的の部屋のふすまを静かに開けると、偉い人はまだ誰も来ていないようであり……だけどそこには既に一人、僕らのような侍従と呼ばれるであろう人が来ていた。
優しそうな目元に下がった眉。強そうというよりは、穏やかそうな印象を与えるこの人は、恐らく僕らより年上のように見える。
兄と同じ高校生くらいか……あるいは、もっと上か。少なくとも中学生には見えない。
だけどこの人もきっと前世の記憶を持っているのだろうと思ったら、少しばかり緊張が走る。
だけど、どんな人物なのだろうとドキドキするのも束の間、眞城くんは特に遠慮するでもなく、そのもう一人の人物に近づき、話しかける。
「あ……兄さん。兄さんも、今日非番だったの」
「九郎。お疲れ。……うん、そう、本当は坂東に帰ろうと思ってたんだけどね。そちらの子は、もしかして昨日の」
!
「えっ……ええええええ???」