早期元服に際し、神勅が下る、条件。
眞城くんと初めて会った時に、言っていた。
一つ目が、前世の記憶を持つこと。
二つ目が……その記憶が誰なのかを思い出すこと。
それは武将だったり政治家だったり、色々あるかもしれないけれど……と、そこまで聞いた時に、眞城くんの前世は源義経なんじゃないかと思って……そうだ、最後まで聞かずに遮ってしまったんだ。
「三つ目……」
「そう。三つ目が重要」
「……わかんない」
「ちゃんと考えた?」
すぐにわかんないと言ってしまった僕に対して、静かで真っ直ぐな眼差しで尋ねる眞城くん。その様子を見ている
「……ちょっと待って」
そう言われる僕は少し考える。
早期元服の条件は……前世の記憶を持ち、それを思い出すこと。
それは武将や政治家だったりすることもあるとのこと。今のこの院政などの時代背景を考えると、平安時代と何か関係がある……とか?
「その記憶が平安時代のものであること?」
「あぁ、それもあるかもね。だけど、もっと重要」
平安時代に生きた人間の記憶を持ち……それ以上に重要なこと……
「平安時代の……歴史的な知名人」
「違う」
「教科書に載ってる人?」
「うーん、遠のいたかな」
「……?」
わからない。平安時代の人で……武将とか政治家とか……色々いるけど……?
……
僕がうーん……と唸りながらぐるぐると考えていると、その様子を見ていた令順さんが助け船を出してくれる。
「じゃあ伊月くん、ヒント。ここはどこでしょう」
「……京?」
「……の?」
「御所……ですけど……」
御所。天皇家のお住まいであり、政治や儀式を行う場所。ここに何か関係が……?
余計にわからない。平安時代に御所を訪れた事がある人……? いや、そんな安直なわけ……
僕が熟考していると、眞城くんたちが話すのが聞こえてくる。
「兄さん、それじゃわかりにくいと思うよ」
「そうかな?」
「伊月くん。『神勅が下る』条件だからね。君は勝手に早期元服してしまったけど、本来、誰が神勅を下す?」
……神勅が下る、条件。
神勅を下すのは
……
……!
わかった……かもしれん。
「
半分ドキドキを抑えられない気持ちで、眞城くんを見る。当の眞城くんは満足そうな笑みを浮かべて僕を見返している。
「正解」
自分で言っておきながら、うわぁ、と思う。
……どういうことか。それは、源氏も平氏も、そもそもは天皇家の血を引く家系であったのだ。
頼朝や義経の源氏の血筋は、清和天皇を祖とする清和源氏であり、一方の清盛や知盛といった平家の血筋は、桓武天皇の子孫である桓武平氏を祖先とする。
この場に来ていたのは、僕と眞城くんと
つまり神勅が下る者は、生まれつき決まっていたということだ。あとはそれを……思い出せるか、どうか。
……。
改めて、不思議な世界だ。神様がいて、前世の記憶を持つ者がいて。
……では、魔物とは一体、なんなのだろう。
僕がそんな疑問を抱いていると、法皇様の使いの者が、間もなく法皇様がお越しになる旨を伝えに来たのだった。