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第4話 消えたプリンセス(1986年 イマジニア)

 皆様、ごきげんよう。

 ♪(作者名)です。


 ある年のお正月、お年玉でゲームソフトを買おうかと小さな電気屋に行ったところ、山積みの投げ売りゲームに気付いたのです。


 そのソフトは『消えたプリンセス』というファミコンのディスクシステムのゲームでした。

 値段は980円です。ちなみに、消費税も無い時代です。


 その値段を見たとき、私の頭にある考えが浮かびました。

 財布の中には残り3000円が入っていたので、3本買いました。


「えっ、3本もですか?」


「はい、3本です。問題ありますか?」


「いえ、こちらとしてはありがたいんですが、ちょっと意味分からなくて……」


「問題ないのなら、後日また買いに来ます」


「えっ……」


 店員さんとこんな会話をしながら、私はソフトを抱えて帰宅しました。

 自宅に帰って貯金を確認すると、残金は5000円ほど。

 よし、あと2~3本は買えるな!(なぜ2~3本なのかは後で分かります)


 翌日、この作戦を友人2名にしたところ……。


「す、すげえ! よくそんなこと思いついたな!」


「お、俺も今日一緒に行く!」


 と、大絶賛。

 3人で買いに行くと、店員さんはより驚いた表情を見せます。

 たぶん、売れると思って多めに仕入れたソフトが全く売れず、投げ売りしてみたものの、それでも売れず。と思ったら、まとめ買いしてくる子どもが登場。しかも、仲間まで連れてきた……。

 ということなんだと思います。


 こうして、私たちは無事入手に成功し、店側は完売することができました。まさにウィンウィンですね。


 さて、なぜ私たちがこんなゲームを大量に買ったかというと、ディスクシステムには書き換えという仕組みがあるのです。

 書き換えをやっている店にディスクを持っていき、500円で他のゲームに上書きしてくれ、マニュアルと張替え用のシールまでくれるので、新品で買ったのと同じ状態になります。


 有名な『ゼルダの伝説』だとしても、500円です。新品で買うと、たぶん3000円くらいだったと思います。

 これが1480円で入手できるという訳です。つまり、私たちはゲームと買ったというより、書き換え用のディスクを買ったのでした。

 残った残金で書き換えをやっている店に行き、『ゼルダの伝説』やら『スーパーマリオブラザーズ2』など、欲しかったゲームを書き換えで入手することに成功したのです。


 計画通り!


 ところが欲しいゲームを書き換えても、ディスクが1枚余りました。

 まあ、いつか書き換えればいいかと思ったのですが、せっかくなので遊んでみようとも思ったのです。



 前フリが長くなりましたが、ここからがゲームのお話です。

 ゲームの目的は、行方不明となった他国の王女と5種の神器を30日以内に探し出すというものです。


 ゲーム開始までのストーリーは、カセットテープが付属しています。

 声優には、プリンセス役に当時アイドルだった富田靖子さんを起用しており、コメディ満載でかなりの力作なのです。

 私の妹がこれを聞き、興味を持ったらしく、私は『たけしの挑戦状』と同じように巻き込まれました。

 多分ですが、妹はクソゲーを引きやすいタイプなんだと思います。


 力作のカセットテープとは違い、ゲームはかなり酷い出来でした。

 例によって、ほぼノーヒントに近く、広いマップを銃片手に彷徨うだけになりました。

 徐々にマップが広がるならともかく、最初からフルマップ(と思われる)に放り出され、どこから手を付けていいのか全く分からないのです。


 散々彷徨ったあげく、30日となりゲームオーバーに。

 プリンセスの居場所は検討もつかないし、5種の神器も1つしか入手できず……。

 あまりのつまらなさ、訳わからなさに、妹も投げ出す始末。


 しばらくして、消えたゲーム(何かに書き換えた)となりました。

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