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第3話 怖がりの女の子と罠

 そうしてやっと、僕等の村であるフウラ村に着き隠してあるボタンを順番に押すと、一つ目の扉が開きそこを潜ると、後ろで開かれている扉が重い音をたてながら閉じると、辺りは光を失い真っ暗になる。


「これ持ってて」

「うん……」


 彼女に魔道具の灯具を渡し、歩き出す。


「暗いのが怖いのか?」

「怖い、だって何も見えないもん」


 僕の言葉にからかわれたのだと感じたのか、不満そうに吐き捨てる。


 何か変だ!

 地面を一気に魔力を込め踏み抜くと前の地面は盛り上がり、盾になる。

「ッ……!!」 


 魔道具ではなく無詠唱で魔法をした反動で発動したと同時に激しい頭痛が襲う。

 壁の横を刃が通り抜けていく。 僕じゃなかったら死んでたぞ。 

 盗賊や侵入者迎撃のギミックが発動していたので勘一髪もいい所だ。


「大丈夫!?」

「あぁ、大丈夫だ」


 少しして落ち着くと、僕は水晶を取り出し、魔力を込める。

 まだギミックはあるから防御系の魔道具を使う。

「手を離すなよ」

 彼女の手を握ると、僕等を覆うように魔力の壁ができる。

 そうして僕らは歩き出すと、目の前で火花が散る。

 目の前だけじゃない、四方八方であちこちでぶつかり火花が散っている。

 この感じ、迎撃スイッチ入れてるな。

 そうして奥へ着き近くにあるスイッチを押すと、攻撃が止んだ。

 「誰だよ」っと探りたいところだが、概ね予想はついた。

 守護の領主の長男にして馬鹿息子のフェイルの仕業だろう。

 嫌がらせに留まっていたが、最近は事故に見せかけ殺そうとしてくる。

 質が悪いのは証拠がなく、全てが不幸な事故として処理できるようずる賢く念入りに陰湿にやってくるので捕まえにくいのだ。

 まぁ、訓練になるからいいけど。

 ただ一つ、彼に感謝することがあるとすれば、さっきみたいに直感で危険を回避できるようになった事だ。

「ごめんな、危ない歓迎で」

「……これ、歓迎なの?」


 彼女は必死に笑顔を作ろうとするが、引いてるのだろう引き攣った笑顔だった。

 殺そうとするのが歓迎だという方が無理があった。

 いくら彼女に記憶がないと言っても、流石にこれは分かるだろう。

 そうして奥に入り、鍵を使い扉を開き村に入る。

「ここが、言ってたリックの村?」

「うん、フウラ村」


 輝く星々のように好奇心いっぱいの瞳で言い放つ彼女に答える。

 そうして僕はこの村の中核の三政室へ向かう。


「リックさん、おかえりなさい……何があったんですか!?」

 三政室の運営管理をしているコウナが心配したように駆け寄ってくる。

 彼女に言われるまで忘れてた傷があった。


「ただいまコウナさん、早速だけど三政会議開けるかな?」

「それより怪我の治療をしてください!! 治療班!!」

「大丈夫だって、かすり傷だし」

「いけません!! 貴方は三政の一人で村の顔なんですから!!」


 少しチクりと痛むだけだが、治療室へ向かう事にした。

 治療室へ向かうと、ミリネという治療班の女の子が治療してくれた。


「これで安心ですね、兄さん」

「あぁ、ありがとうミリネ」


 医療室で治療してくれたミリネにそういうと、彼女は呆れたようにこっちを見てくる。


「今度はどんな無茶したの? 盗賊拠点の単独壊滅とか?」

「うんうん、ちょっとミスっちゃってね」

「ふ~ん」


 僕の手を握る女の子の方を見ると、何かを察する。


「怪我もほどほどにしなよ、皆心配するからさ」

「ありがとな、治療してくれて」

「仕事ですから。 あ、でもでもどうしてもお礼がしてほしいって言うならパフェ、奢ってくれてもいいな」

「はいはい、また今度な」

「楽しみにしてま~す」


 そう言って彼女が奥に行くと、少ししてコウナが入ってくる。


「いいでしょうか?」

「あぁ、ごめんね。 忙しいのに」

「いえ、それでこちらに来たのは三政会議という事だと思い直ぐに各長に連絡させていただきました」

「流石、仕事が早いね」

「一応、イアさんは直ぐに来られるとの事ですが、リーディール家からは次期当主候補の中からイファル様が来られるとの事です」

「わかった、ありがとう」


 イファルは次期当主筆頭候補で、フェイルに次いでの当主権を有している。

 権力を誇示するフェイルとは違い、真面目で誠実な村の皆から尊敬される男だ。

 彼が来る時は会議も円滑に進めることができるのでいい。

 そうして少しして扉を綺麗な紺色の髪を靡かせながら入ってくるイア・フォールが入ってきた。


「やぁイア、急に呼び出して悪いね」

「いいわよ、それよりその子は?」

「盗賊に襲われてた所を助けたんだ」


 イアは「ふ~ん」っと言って彼女を見つめ、にこりと笑いかける。


「初めまして、ボクの名はイア・フォールっていうの、イアって呼んで」


 少女の表情は戸惑いと申し訳なさが入り混じっているように暫く沈黙していた。

 名乗るべきなのだが、名乗る名がわからないからだろう。


「イア、この子記憶がないみたいなんだ」


 僕は彼女の代わりに答えると、イアはこっちを向き何か察したのか、少女に「そうなの?」っと問いかけると小さくうなずいた。


「なるほどね、それで呼び出したのはこの子の件?」

「それもあるけど、魔物の件等色々報告がある」


 つい最近、魔力を持つ魔物の活性化による被害の増加についてと盗賊の壊滅傾向または流動傾向にある事だ。

 最近魔物の活性化が著しく、近隣の村にも被害が拡大してるし、その後の修復期間中に盗賊による襲撃の例も増えてきている。

 これに関しては一時的に他の村から戦闘員を派遣して強固にはしているが、それもいつまでもつかわからない。

 魔物の襲撃が激化すれば防壁が複数崩れる場合もないとは言い切れないし、そうなればいくつかは壊滅的な被害が出るだろう。


「最近激化してるもんね、何かあるのかな?」

「わからない、だけど調査は必要だと思う」

「だとすれば誰が行く? ボクと君のどっちでもいいんだけど?」


 これに関しては僕か彼女かの二択としたいところだ。

 どちらもいなくなったとしたらあのバカ当主候補が何しでかすかわからないからだ。


「それに関しては考えがあるけど、イファルが来てから考えよう」


 フェイルだったら「お前等でかってやれ、俺は知らないからな!!」って自分は一切やらないから僕らが先に内々で決めれるがイファルが来るのなら相談するべきだろう。

 そうして彼が来るまでの数分、僕らは待つのだった。


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